第295話 食後の一杯と

「いやぁ、美味しかった。流石は噂に名高いスレインド王国の第3王子様の手料理だね。ヌロスレアの料理なんて比じゃないくらい豪華で美味しかったよ」


本日も美味しそうに食べてくれた子供たちがお風呂に入り、就寝に着く頃。


アリシアや残りのシスターさんに子供達を任せると、俺はケイオス達と机を挟んで向かい合っていた。


並ぶのはケイオスとその連れのケイオス姉とケイオス従兄弟。


こちら側には俺と虎太郎、そしてシエルの三人で丁度並び合う。


食後の一杯と言わんばかりに、優雅に俺の作ったワインを飲むケイオスだけど、それが様になるのだから凄いやつだ。


「お気に召して頂いたようで何よりだよ」

「この料理で、シエル殿も堕とされたのかな?」

「ぶっ!?」


思わず飲んでたお茶を吹き出しそうになって、軽く咽るシエル。


「全く……からかい過ぎだってば」

「いやー、ごめんごめん。ついね」


咽るシエルを落ち着かせつつ呆れたような視線を向けると、実にいい笑顔を浮かべるケイオス。


「虎太郎殿もそうなんだろ?」

「んー、まあ、確かに坊主の料理はすげぇが、俺はむしろ坊主の領地で嫁さんと出会ったからそういう意味でなら堕とされたのかもな」

「ははは、シリウスは人たらしだね」


人聞きの悪いことを言うケイオスだけど、虎太郎の場合はスカウトが上手くいっただけなので勘違いしないように。


「まあ、でも、シリウスがこのタイミングでヌロスレアに来てくれたのは奇跡と言ってもいいかもね。その上で僕らが出会えたのも」


ゆっくりとワインを口に含んでから、味わって飲むとケイオスは真面目な表情を浮かべて尋ねてきた。


「シリウスは僕のことはどこまで知ってるのかな?」


どこまで……か。


「簡単なことなら教えて貰ったよ。ケイオスは俺のこと……いや、この国の現状と真実をどこまで知ってるのかな?」

「僕の方も簡単なことは知ってるつもりだよ。父上に化けた化け物のこととかね」


父上に化けた化け物。


やはり俺が見たのはヌロスレア国王本人では無いのだろうと改めて確認できたけど、それにしても良くそれらの事実を知ってて今まで生き延びれたものだ。


口ぶりからして、最近知ったと言うよりも前から知っていたような感じだし、その辺は少し気になるかも。


「本物の行方は分かる?」

「恐らくもうこの世には居ないだろうね。僕や姉さん達が生きてるのが奇跡のようなものだし。まあ、それこれもあの化け物的にはゲームや暇つぶしのような心持ちで僕達は生かされるとも言えるけどね」


そう、どこか暗い気持ちを遠くに押しやるように、ケイオスは自身のことを語り始めた。



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