第286話 二人の相性

近くのお店で新作の白銀桃のスイーツの情報を仕入れつつ、屋敷が近づいてくる頃には、アリシアとラナはかなり仲良くなっていた。


「じゃあ、ラナさんもシリウス様に助けて頂いたんですね」

「そうなんです!今でも夢にみるくらいに、あの時のえい……シリウス様は心底カッコよかったです!」


そんな中で、互いに窮地を俺に救われたと話しているのだけど、俺としてはその話に何とも言えない気持ちにさせれらる。


もちろん、感謝されるのは嬉しいけど、そこまで大きなことはしてないのにここまで持ち上げられるのもねぇ。


それに、ラナの場合はかなり遅れての参戦だったし、もう少し早く俺が行ければ、ラナの父親を死なせることもなったかもしれない。


アリシアに関しても俺がもっと早くヌロスレアの事を知ってたら救えた命もあると考えるとどうしても複雑な気持ちになってしまう。


まあ、そんな事を言えば二人を困らせるし口には出さないけどね。


しかし、それにしてもラナは上手いこと前世での出来事を今世に置き換えて話せてるので凄いものだ。


ラナとしての人生の中に、無理のない範囲で脚色しつつも事実をねじ込むスタイル。


俺も見習いたいけど、婚約者相手だと嘘だと見抜かれる可能性が高いし、それに今世は今世、前世は前世と切り替える気持ちが強いからなぁ。


「あ、もちろん普段のシリウス様もカッコ良いですけどね!でも、普段はその中に可愛さもあって更にいいんです!」


うっとりとそんな事を言うラナ。


自分のことをここまで慕ってくれるのは嬉しいけど、その夢を砕くような本人なので少し気が引ける。


「分かります。シリウス様は年下なのに凄く包容力があって、凄くカッコ良いいんですね」

「その通りです!やっぱりアリシアさんとは仲良くなれそうで良かったです!」

「私も、あまり同年代のお友達は多くないので嬉しいです」


互いに笑みを浮かべるアリシアとラナ。


「それに、好きな人が同じなのも大きいですよね」

「ふぇ……!?そ、それはシリウス様の前では、そのぉ……」

「あ、ダメでしたか?」

「あぅ……その……上手く言葉に出来ないくらいの気持ちなんです……」


意味深な事を言うアリシア。


そのもじもじした恥じらう乙女の顔は実に可愛いけど……いや、まさかね。


「恥ずかしがり屋さんなんですね。じゃあ、一緒にシリウス様に気持ちが届くように頑張りましょう!」

「ええっと……はい……」


うん、きっとラナに流されて返事しただけだよね。


そう思うことにしよう。


それにしても、こんな往来でそんな話しなくても良くない?


更に領民たちから温かい視線が向けられるのだけど、まあ、何にしてもアリシアとラナは仲良くなれそうだし、それは良かったかな。

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