第285話 どこまでも前のめり
「坊主、俺は一足先に嫁さんと子供達の顔を見に行く」
ラナとアリシアが仲良くなる様子を見てから、虎太郎がそう断言する。
「うん、この後も忙しいだろうし顔見せて安心させてきなよ」
「おう!」
元々そのつもりだったし、俺としても止める気はないので軽く了承すると、虎太郎は実に軽い足取りで自宅へと戻っていった。
向こうで子供たちの相手をしていても、やはり実の子というのは別格というか別腹というべきか。
愛する奥さんと子供たちの顔を少しでも早く見たいと早々に駆けていくその姿はある意味爽快であった。
「さて、俺はこれから屋敷に戻るけど、ラナは……」
「何処までもお供します!」
……うん、返事は何となく分かっていたけど、何処までもは大袈裟では?
しかし、不思議と俺がどこに向かってもラナが笑顔で着いてくるイメージが浮かんでくるのだけど、流石に妄想だろうと思いたい。
「分かった。じゃあ、屋敷に向かおうか」
虎太郎が居なくなり、俺はアリシアとラナの美少女二人連れで屋敷に向かうことになるけど、それでさえ住民たちは温かい視線を向けてくるのだから不思議なものだ。
「あの、シリウス様。こちらからお願いしたことですが、このような格好で婚約者様達にお会いしても大丈夫でしょうか?」
「ん?どこか変かな?」
思わずじっとアリシアを眺めるけど、修道服の似合う可愛いシスターさんにおかしな所はなさげであった。
「んー、いつも通り綺麗だと思うけどね」
「綺麗……でしょうか?」
「うん、それに俺の大切な人達は見た目で人を判断することはないから、そこは気にしなくても大丈夫だよ。アリシアはアリシアらしくね」
そう微笑むと、アリシアは恥ずかしそうにしつつもこくりと頷く。
「シリウス様、シリウス様」
さて、大丈夫かなと思っていると期待をするような視線を向けてくるラナの姿が。
「あー、うん。ラナも今日の服可愛いね」
「シリウス様のために最近は見た目も気をつけてます!少しでも早く娶って頂きたいですし、愛するシリウス様に可愛いって思われたいですから」
……この娘は本当にストレート過ぎやしませんかね?
面と向かってそんな事を言われると、どれだけ鈍かろうとその言葉と表情から本音と分かってしまうもの。
俺なんかのどこが良いのか本当によく分からないけど、こうまで慕ってくれるのなら、その気持ちには応えたい所ではあるけど、それはもう少し互いを知ってからだろう。
まあ、婚約者達に既に売り込んでるようだし、たった数日で馴染んできてる様子を見るに外堀は埋められてそうだけどそれはそれ。
ラナに悪意はないし、婚約者達と仲良くやれるなら悪い子じゃないのは確かだし、全ては明日の自分に任せようと軽く保留にしておく。
忙しいことが重なってるし、そういう大切なことはちゃんと考えてからじゃないとね。
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