第287話 全てを見抜いてそうな正妻さん

「お帰りなさいませ、シリウス様」


屋敷に入ると、まず最初に出迎えてくれたのはフィリアであった。


「ただいま、フィリア」


フィリアの笑みを見ただけで、帰ってきたという感じになるのだから、我ながら単純なものだけど、悪くない。


「……シリウス様、また女の子連れてきた」

「色々事情があるのだろう。そういう御方だ」

「……その割には若い人がまた増えてシャルティアは大ピンチな様子」

「そ、そんな訳あるか!」


玄関にはフィリアだけなく、俺の婚約者達全員が揃っており、まず最初にいつも通りのやり取りをするセシルとシャルティアが目に入ると再度安堵を覚える。


「にしても、フィリア様の言う通り、本当にラナと一緒に新しい子連れてきたわね」

「フィリア様ってば、本当にシリウスくんのこと分かってるよねぇ〜。私達も負けないけど!」


スフィアとセリアの言葉から、どうやらフィリアは俺がアリシアを連れてくることを予期していたらしい。


そこには驚かないけど、フィリアには俺が向こうが何をしてるのかもバレてそうだし、気苦労をかけないよう気をつけないとなぁ。


「それにしても、本当にここは人が増えてくわね」

「仲間が多いのは楽しいからいいじゃん。ねぇ、ソルテちゃん」

「……(こくり)」


ソルテは俺の傍に来ると、少し抱きついてから満足したように笑みを浮かべる。


この子もかなり寂しがり屋だし、戻ってきて安心させてあげたかったので良かった。


「少しの時間とはいえ、やっぱりシリウス様が居ないと寂しかったので、お顔が見れて良かったです」


にっこりと微笑みつつ、フローラがそう言ってくれる。


相変わらずこの子も癒し系のオーラが強いので不思議とホッとする。


「アリシアさんですね。お話はシリウス様より大まかにですが伺っております」

「は、初めまして。アリシアです」

「そう固くならずに。シリウス様がお認めになった方……見初められたということでしょうし、仲良くなれると嬉しいです」


その言い方は色々誤解を生みそうだけど、確かにアリシアが婚約者達に会わせちゃダメな相手ならここには連れてきてないし間違ってはないのかな?


「あの、シリウス様には色々とお世話になって。それで、少しでもお役に立てればと思いまして……」

「はい、分かってます。私達の中にもそういうきっかけの方は居ますからね」


アリシアの言葉に、全て分かってると言わんばかりに微笑むフィリア。


母性すら感じるその笑みは、出会った頃から更に成長してますます魅力的になってきたフィリアの笑みだけど、やっぱり電話越しではなくリアルに傍にあるこの笑みが何より尊く感じる。


そして、そんなフィリアと共に短い帰省時間であれこれと世話を焼いてくれる婚約者達が最高に大好きです。


しれっとラナがそのお世話をしてくる側に混じってるのは気になったけど……それはそれ。


やっぱり我が家は最高だねぇ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る