第276話 午後の用事

俺の用意した食材を使って、アリシアが作ってくれた昼食はどれもこれもかなり美味しくて、アリシアの家庭スキルの高さを改めて実感することになったけど、何よりも美味しそうに食べる子供たちの様子は不思議と心温まるものであった。


先日まで、日々の糧に困っていたからか、まだまだ栄養が足りてないことは明白だけど、それもこれから徐々に健康的に育ってくれるようにサポート出来れば良いかな、と思いつつ食後のお茶を飲んでいると、片付けを終えたアリシアがふと尋ねてきた。


「ところで、午後は何かお手伝いが必要と聞いてましたけど……」

「ん?ああ、そうだね。時間的にもそろそろ行きたいところだけど……」


チラッと確認するとお腹いっぱいで少しお眠な子供たちの様子が目に移り少し考える。


「……うん、とりあえずアリシアと何人かシスターさんが居てくれると助かるかも」

「分かりました。じゃあ、準備しますね」

「よろしく」


本当は子供たちにもお手伝いを頼もうかと少し考えていたけど、初日だし俺とアリシア、あとはシスターさん数人居れば問題ないだろうという結論に至った。


それに、子供のお仕事はよく食べて、よく寝て、よく遊んで、よく笑うこと。


俺も年齢的にそちら側に居た方が自然なのだけど、それはそれということで。


「坊主、午後はどうするんだ?」

「ボランティアを少ししようかなぁって」

「ボランティア?」


子供たちの何十倍かの量の昼食を食べても相変わらず余裕そうな虎太郎がボランティアという単語に首を傾げる。


未だに、たまに前世のワードがナチュラルに出てくるのは困りものだなぁ……。


「さっきのヌロスレア国王へのお願いをさっそくやろうかなって」

「ああ、なるほどな。んで、俺は適当に立ってればいいのか?」

「そうだね、それでお願い」

「おうよ」


物分りの良い虎太郎は相変わらずすぐに理解してくるので、余計な説明の手間がないのは有難い。


婚約者達のように以心伝心する感じとは違って、何となく分かる程度ではあるけど、そこそこ長い付き合いになってきたしそれもある意味必然かな。


にしても、虎太郎は自分であまり頭が良くないと言ってるけど、使う気がないだけで地頭は良いのでそう考えると結構スペック高いよね。


本当に良く俺の領地に来てくれたとしみじみ思う。


アリシアも是非とも俺の元に来て欲しい人材だけど、子供たちごと引き抜いて領地に連れてくのがやっぱり最善かな?


まあ、その辺はおいおい考えるとして、まずはボランティアを頑張るとしようと俺は少し温くなってきたお茶を飲み干して準備をするのであった。




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