第275話 なんて事ない優しさ
孤児院に戻ると、結界は正常に機能してるようで特に異変はなさそうだった。
我ながら中々に良い出来だけど、早めにこういったものが無くても安全に暮らせるような環境にしてあげたい所。
外でのびのびと遊んでも大丈夫な平和な場所になれば尚よし。
「お帰りなさいませ、シリウス様」
結界を抜けて室内に入ると早々に子供たちに見つかって揉みくちゃにされるけど、思ったよりも元気そうで良かった。
そんな事を思っていると子供たちを宥めつつアリシアが出迎えてくれる。
「ただいま、アリシア。異常はなかった?」
「はい。お昼ももう少しで出来ます」
「そっか、任せきりにしちゃったね」
「お料理は好きなので問題ないです」
既に昼食の準備が整ってるそうで、手伝えなくて少し申し訳なく思っていると、大丈夫とばかりにそう微笑むアリシア。
不思議と安心感のある笑みだけど、それを見てるとやっぱり俺よりもこの子の方が聖女と呼ばれるべきだと思うんだよなぁと、しみじみ思う。
「そっか、ありがとう」
「いえ、こちらこそ、シリウス様には色々とお世話になってますので」
「そうかな?」
「そうなんです」
俺としては出来るだけのお節介しかしてない心持ちなのだが……まあ、いいか。
「じゃあ、お互い様ってことでいい?」
「はい」
思わずくすりと笑いあってしまう。
あれだね、午前中に会ってきた連中が濃かっただけにやっぱりアリシアみたいな裏表ない美少女の笑みが癒しに思えるよ。
「もう少ししたら出来ますので、座って待っててください」
「ありがとう。なら、お言葉に甘えるよ。アリシアの料理楽しみだし」
「なんというかあれだな。新婚みたいなやり取りだな」
そうしてアリシアと話していると、虎太郎がそんな事を言うのでアリシアが照れてしまう。
新婚もなにも俺はまだ結婚すらしてないんだけどなぁ……まあ、でも新妻って響きは不思議と悪くないかも。
「まあ、夫役の俺はともかくアリシアは良い奥さんになりそうだよね」
「そ、そうでしょうか……?」
「うん、気が効くし優しいし、何よりも可愛いもん」
「……!?あ、ありがとう……ございます……」
容姿だけでなく、その心根も良いのできっと素敵なお嫁さんになるだろうなぁという予想を呟くと更に追い打ちをかけてしまう結果になってしまった。
事実だし、特に修正はしないけど、最初に言い出した虎太郎がニマニマしてこちらを見てるので、からかう気満々だったのだろうことはよく分かった。
まあ、虎太郎だし仕方ないけど、それにしても虎太郎よ。
その『流石は坊主だ。口説くのが上手いことで』という顔は止めなさい。
一切下心なんてないし、断じて口説いてないから。
ただ本心からそう思っただけというのを視線に込めてみるけど答えは変わらぬニヤニヤ顔であった。
解せぬ。
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