第253話 内情
「それで、少し聞きたいんだけど……クーデター組織の現状ってどうなのかな?」
もう時期拠点に着きそうな距離まで男装のコツを楽しそうに語るビケニィにそう尋ねると、先程とは打って変わってビケニィは少し表情を暗くして答えた。
「それなのですが……実はここ数日、荒れていまして」
「というと?」
「組織内で、いくつかの派閥があるのですが、過激派と穏健派と言えばわかりやすいでしょうか?一刻も早くどんな犠牲を払っても革命を成し遂げたい過激派と、周到に準備をして決行する穏健派で意見が分かれてるのですが、穏健派の主要人物が軒並み暗殺されているのです」
クーデター組織なのに過激派と穏健派があるのか……という疑問よりも、それよりも更に面倒なワードが出てきて眉を潜めてしまう。
「暗殺?」
「はい。幸いにもトップである私の上司……これからシリウス殿下にお会いして頂く穏健派の最有力者は無事なのですが、過激派はその勢力を増してると言ってもいいかもしれません」
「犯人の目星は?」
「調査中としかお答えしようがありませんね」
口には出さないけど、その暗殺の首謀者が過激派である可能性が高いとビケニィは考えているように思えた。
国を良くしようとした結果、その方向性で割れるのは仕方ないこととはいえ……足の引っ張り合いがあるのも人間らしいといえばらしいのかな?
「そんな状況で、坊主を呼びに来たのか?」
「ご安心を。我らにとって殿下を味方にしようとする意図はあっても害するような愚かな真似はまず有り得ませんから」
先を見据えても、この状況で俺を殺してスレインド王国を敵に回すような真似は絶対にしないだろうというビケニィの予測だけど、どれだけ頭が悪かろうと、今の栄えているスレインド王国を今の底辺な国力のヌロスレア王国で相手をするような真似はまず無いと理屈としては分からなくもない。
無いのだが……それらを無視して走ってしまうのも人の性なので警戒だけはしておくべきだろう。
虎太朗も似たような考えに至ったのか軽く頷いたので、それを見てから、ふと思い出したことを尋ねる。
「ところで、マーデリン王国としては民の安全を最優先……という考えで大丈夫?」
「それは勿論です。我らが欲しいのは土地ではなく人ですから。圧政に苦しめられる国民を救えて我らの平和を守れるのならそれに越したことはありません」
真っ直ぐな瞳で答えるビケニィは心からそう思っているようなので、ひとまず信頼できそうで何よりだ。
まあ、ヘルメス義兄様が仲良くする国の相手なのでそこまで心配もしてなかったけど……それにしても、ビケニィのような真っ直ぐな正義感のある人は悪くない。
是非とも今後も仲良くしたいものだ。
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