第252話 協力者
クーデター組織の使者として来たビケニィの案内で、拠点の一つへと足を運ぶことになったけど、流石というか、道中にはいくつかの魔道具が用意されており、痕跡を残さないように徹底していた。
「ビケニィだったか?お前さんはどこの所属なんだ?」
それらの魔道具を眺めながら、色々とインスピレーションが刺激されるのを感じていると、虎太郎がストレートにそんな事を尋ねる。
「どこ……というのは、出身国という事でしょうか?」
「ああ。答えなくても構わないぞ」
虎太郎らしいといえばらしいけど、敵か味方かを探る意図もあるのだろう。
とはいえ、その点に関しては俺としてはそこまで心配はしてないけど。
「多分、マーデリン王国の人だよね?その腰の剣に付いてる紋章には覚えがあるよ」
「ご慧眼恐れ入ります」
正解だったらしい。
マーデリン王国は確かシスタシア王国と親交があったはず。
そして、ヌロスレア王国にも近いし、このタイミングで俺の存在を知っているとなれば、恐らくビケニィの会わせたい人物がクーデター組織の中心人物に近い存在なのだろうと予想はつく。
ヘルメス義兄様なら、俺が今ヌロスレアの王都に居ることも容易に想像出来るだろうし、それを協力者に伝えていてもおかしくはない。
ヘルメス義兄様としては、マーデリン王国に上手いことヌロスレアを建て直して欲しいのだろうが……それにしても、俺がまだ王都に居ると分かる辺り、ヘルメス義兄様の先読みの力が半端なさ過ぎて尊敬しかないよね。
まあ、父様やレグルス兄様もその辺は凄いんだけど……身内に優秀なイケメンが多い俺は幸せものだよね。
「坊主、大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うよ。それに見たところ彼女は聖騎士のようだしね」
「……ちょっと待て。彼女?」
ん?と思わず虎太郎と顔を見合わせる。
「どうかしたの?」
「……なあ、ビケニィは女……なのか?」
「そりゃそうでしょ。どう見ても女性だけど……分からなかったの?」
「いや、だってな……」
まあ、パッと見凛々しいイケメンにも見えなくないけど、カッコイイお姉さんという感じがよく出ている美人さんだ。
「驚きました。まさか一目で女だと見破られるとは……」
困惑する虎太朗とは対象的に、ビケニィは少し驚いたようにそんな事を言う。
「これでも普段は男に見えるようにしてるはずなんですが……流石は彼の王が信頼を寄せるお方ですね」
「坊主は色々と規格外だからな。とはいえ、上手いこと男装してるもんだな」
「半分は趣味でして。それが高じて今の職務に抜擢されたので後悔はありませんよ」
女性に黄色い声援を送られるのが大層楽しいらしく、男装を大いに楽しんでるらしいビケニィはイキイキと変装のコツなどを語るが、こういう多様性もあるのだからマーデリン王国も中々油断ならないのかもしれないとしみじみ思うのであった。
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