第238話 好みと好色
「じゃあ、先々代の国王の頃から一気に酷くなったんだ」
「はい、私もその頃は存じませんが、特に今の国王陛下は好色と圧政で民を苦しめているというのが、皆さんの評価のようですね」
子供たちが寝付いて、一息つくためにお茶とお茶菓子を用意してアリシアから話を聞くけど、大抵がヘルメス義兄様の説明の補足のようなものだったので、やはりヘルメス義兄様の情報収集力の高さは半端ないと改めて思ったのだが……まあ、それそれとして。
「好色って話は初めて聞いたかも」
「あくまで噂ですが……国中の気に入った女性を権力で無理やり召すそうです」
「つまり、坊主とは正反対の好色って訳だ」
緑茶を飲みつつ、そんな事を言う虎太郎。
「いやいや、何で俺が好色認定されてるの?」
「それ聞くか?坊主の婚約者の数を見れば、大抵の奴はそう思うだろうさ」
「シリウス様は婚約者さんが多いのですか?」
「今はまだ8人だが、そうなりそうなのも含めると10人越えてるかもな」
「それは凄いですね」
一瞬、何故8人なのかと首を傾げそうになるけど……ああ、そっか、形的には一応ティファニーも婚約者に入ることになるのか……なんか、正式にそういう手続きがきてたし、レグルス兄様の気合いの入り方が半端なくてビックリしたのを思い出した。
無論、俺の気持ちを汲んで、フィリアよりも序列をあげずに嫁げるようにするそうだが……何にしても、形的にはティファニーは姪なのに婚約者となってしまっていた。
本人も今は無邪気に喜んでるからいいけど……破談とかになっても、ティファニーが本気で好きな人が出来たら是非ともそうして貰ってもいいとは思う叔父心もあった。
まあ、ティファニーの成人までまだまだ時間はあるし、未来のことなので確定ではないと俺は自分に言い聞かせることにした。
「でも、シリウス様のようなお方なら確かに色んな女性に好かれるのも頷けます」
「アリシアの嬢ちゃん的には好みのタイプか?」
「ふふ、どうでしょうね」
そう言いながら意味深な視線を向けてくるアリシア。
それを見て、虎太郎がまたしてもニヤニヤとした視線を向けてくるので、俺はそれをスルーしてお茶菓子を楽しむ。
甘いものは良いなぁ……この国が平和になったら、質の良い美味しい葡萄を定期的に仕入れられるし、是非ともそれで色んなお菓子を作らねば。
「そういや、さっきの話だと、アリシアの嬢ちゃんも国王様に呼ばれたりしたのか?」
「いえ、私はお気に召さなかったのか、呼ばれたことはありませんね」
虎太郎の何気ない問にそう答えるアリシアだが……マジか、アリシアレベルの美少女が呼ばれないって、この国の国王はどんな趣味をしてるのだろう?
「そうなのか?見る目がねぇ王だな」
「確かに、アリシアは可愛いし、綺麗なのにね」
そう言って同意すると、恥ずかしそうに視線を逸らされた。
なんか変なこと言っただろうかと思ったが、他のシスターさん達も何となく俺たちに温かい視線を向けてくるのが少し気になったが……まあ、とりあえず、アリシアが毒牙にかかってないのは良かったよ。
この子のような優しい子には好きな人と結ばれて欲しいしね。
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