第239話 アリシアの気持ち

「ちなみに、アリシアとしては今のこの国をどう感じてるの?」


そうして色々と聞きながら、ふとアリシア自身の考えも気になったのでそう尋ねると、アリシアは少し考えてから答えた。


「私個人……ということでしたら、良い方向に進んでいるとは言い難いですね。このままでは、罪のない人達が過ちをおかしてしまう。それ以前に現状では、明日の生活すらままならなくなっていますし」


ふむ、やはり想像以上に汚染が進んでるのだろうと改めて思っていると、表情を曇らせてアリシアは続けた。


「私も少しは皆さんの力になれればと、なるべく多くの方を治療するようにはしてますが……それくらいしか、出来ない自分にどうしても、悔しくもなります」


心底そう思っているようだが、俺としてもその気持ちはよく分かるので、なんと答えるか少し考えてから言った。


「アリシアは頑張ってると思うよ。子供たちを守って、色んな人を助けて、凄く頑張ってると思う。だからこそ、俺はそんなアリシアを助けたくなったんだし」

「シリウス様……」

「大丈夫。後はなんとかしてみせるから。だから……遠慮なく俺を頼ってよ」


そう言うと、ポツリとアリシアの頬を一滴の涙が零れ落ちる。


溜まっていたような、今までの分を出すように少しの間蹲るアリシアを、何となく俺は放っておけなくて近くまで行って優しく抱きしめていた。


如何にアリシアが強かろうと、この辛い状況で頼れるものもなく子供たちを守るのは中々に大変だったはずだ。


見たところ、アリシアの年齢はこの世界の成人年齢の15歳前後のはず。


大人びていようと、まだまだ子供な部分だってあるはずなのに、それを隠して頑張っているこの子を見ると、やはりどうしても放っておけない気持ちが強かった。


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、虎太郎はやれやれと言わんばかりにニヤリと笑っていたが……あの顔なら、俺のこの後の行動にも予測がついたのだろう。


クーデター組織に任せてそれですぐに片付くならそれでよし。


そうでないなら……多少手荒でも、大きく事を進めることも必要かもしれない。


(本当に関わる気は無かったんだけどなぁ……)


とはいえ、実際に苦しんでる人達を見ると、放っておけないのは、前世からの呪いのようなものかもしれない。


とはいえ、今回のことはヘルメス義兄様も動いてるようだし、大きく動くとなると父様やレグルス兄様達にも多少は話を通す必要もあるかもしれない。


何にしても、まずは情報を集めて……クーデター組織の様子見でもしようかな。


そうして、優しくアリシアを抱きしめつつ、今後の方針を決めたのだが、その腕の中……俺の腕の中でグズるアリシアが落ち着くにはもう少し時間が必要そうだし、それはもう少し後になるかもしれないなぁと思いつつ俺はよしよしと優しくアリシアを落ち着かせるのであった。














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