第228話 謎の積極性
「じゃあ、またね」
お店の近くまでラナを送ってから、俺がそう言うと、ラナは縋るような視線を向けてきた。
「あのあの!英雄さんは今はどちらに!」
「スレインド王国の貰った領地で暮らしてるよ。俺は空間魔法を使えるから、転移で好きに移動できるから、また来るよ」
「絶対ですよ?」
「うん、約束するよ」
そう言うと心底嬉しそうに笑みを浮かべるラナ。
しかしそれから少し考えてから、ラナは思い切ったようにこんな事を言う。
「あの、英雄さん!私も付いて行っちゃ……ダメですか……?」
「付いてくるって俺の領地に?」
「はい!もっとお傍に居たいんです!」
「……まあ、俺は構わないけど、お父さんとか色々大丈夫なの?」
いきなり愛娘が国外に行くとなれば、あのバーのマスターさんとしても思うところがあるだろうし、その辺は大丈夫なのかと言うとラナは言葉に詰まる。
「うっ……確かにお父さんは反対するかも……でも!何とかしてみせます!」
何故にここまで慕ってくれてるのかは不明だが、やる気満々な様子のラナに俺はふと思いついたことを言ってみる。
「なら、ウチの領地にお店を出さない?俺としてもこういうお店が領地にあった方が楽しそうだし、付き合いのある人たちも連れて行きやすいし」
特に大人を連れて行きやすいのは良いかもしれない。
虎太郎も飲めなくはないはずだけど、むしろお酒よりも燻製系統の料理にハマりそうだし、父様や兄様達と大人になってからゆったりと飲めるお店はかなり良い。
アロエ先生やドレッド先生達とも来れるし、我ながらかなり良い案だと思わなくもない。
「是非お願いします!」
現に、ラナはキラキラした瞳で頷いたし。
なので、俺は早速大人モードになってから先程のバーに入って店長さんに話をする。
シリウスの姿のまま入っても良かったけど、大人モードで一度会ってるし、そちらでシリウスの使いとして来たと話して提案すると、店長さんはあっさりとOKを出した。
このお店を知り合いに任せて、本人とラナはウチの領地に来てくれるらしい。
費用やその他諸々は俺が出すことにしたけど、その辺の費用には困らないくらいにラナは上手いこと今世で稼いでいたようなので、本当にただのお節介でもあった。
「英雄さん、ありがとうございます!」
最も、俺からのそのお節介が嬉しいようで、ラナにはかなり喜ばれたけど……にしても、この子は予想以上に俺を慕ってくれてたようだと再認識する。
まあ、好かれるようなことは何一つ出来てない気もするけど、この好意を裏切らないようにはしてあげたいものだ。
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