第218話 街歩きの醍醐味

ヘルメス義兄様から頼み事を受けてから、ローザ姉様や甥や姪に会って触れ合ってから、俺はシスタシア王国の王都の街を一人で歩いていた。


シスタシアにはそこそこ来るのだけど、こうして一人で歩くのはかなり久しぶりな気がして新鮮な気持ちになる。


婚約者達とのデートもいいけど、こうしてたまには一人で歩くのも悪くないと思えるのは、たまにだからこそかな?


婚約者達との生活が賑やかで楽しいから、不満なんて微塵もないし、最近はボッチの時間も減って楽しいからこそ、たまの一人が悪くないと思えるのかもしれない。


「よう、いらっしゃい。今日は一人かい?」

「まあね。小豆オーレ頂戴」

「毎度あり」


何度かデートで来たことのある屋台のおじさんと軽く話してから、小豆オーレを飲みつつ街を散策する。


ぶらぶらと目的なく、気の向くままに街を歩くと何だか時間を贅沢に使えてる気がする辺り、昔の癖が抜けてないのかもしれない。


「せっかくだし、今日は少し裏道でも巡ろうかな」


定番の表通りは散策するだけでも楽しいので、良いのだけど、一人だからこそ新規の道にもチャレンジしようと裏道へと入っていく。


表通りよりは閑散としてるけど、賑わってないわけでもないので、悪くない発見をしたと少し得意げになる。


「ん?」


そうして散策していると、ふと、ある店で足を止める。


落ち着いた雰囲気の……喫茶店だろうか?


何となく気になったので、中に入る。


店内は一人もお客さんは居なくて、カウンターの奥に初老くらいの渋いマスターさんと、若いウエイトレスさんがいた。


「いらっしゃい」

「あ、いらっしゃいませー」


渋く深みのあるマスターの声とは裏腹に、のんびりとしていた様子のウエイトレスさんは慌てて立ち上がった。


「入っても大丈夫?」

「どうぞ」

「ありがとう」


どうやらしっかりと営業してるようなのでホッとしつつも中に入る。


落ち着いた内装の店内は、まさに純喫茶と言われても違和感のない装いでマスターの渋さでその魅力が引き立っていた。


「メニューをどうぞー」

「どうも」


若いウエイトレスさんからメニューを受け取ると、ほとんどがコーヒーのようで、値段も庶民向けとは言えないレベルなので、少しお高めのお店ということかな?


コーヒーにそこまで詳しいわけではないけど、不思議と元気の出る魔法の栄養剤と同じくらいにはブラックのコーヒーは飲んでいたかもしれないので、懐かしくなりつつオススメを頼んでおく。


オリジナルブレンドというやつかな?


他にもサンドイッチを軽食として頼んでおくけど、コーヒーにサンドイッチとは何とも優雅に思えるのは俺だけだろうか?


何にしても楽しみだ。










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