第217話 ちょっとした様子見

「それで、もう1つの頼みなんだけど……シリウスはヌロスレア王国は知ってるよね?」

「ええ、隣国ですしね」


シスタシア王国から比較的隣国と呼べそうな国の1つにヌロスレア王国という国があるのを思い出していると、ヘルメス義兄様はそれに頷いて続きを話す。


「そのヌロスレア王国の国内は最近荒れててね。近々クーデターが起きそうなんだね」

「それは大変ですね」

「まあ、それが成功しようとも失敗しようとも僕たちにはあまり関係ないんだけど、問題なのがそのクーデター組織に他所の国のスパイが沢山潜り込んでるって事ね」


クーデター組織にスパイねぇ……


「ウチもスパイを放ってはいるけど、調べた感じ、複数の国からスパイが来てるようでね、何人かはクーデターの中枢に近い位置にも居るらしいんだ」


要するに、そのクーデターが成功した場合にはヌロスレア王国がどこかしらの他国の傀儡にもなり得るということかな?


腐敗した国と傀儡、どちらが良いのかは不明だけど、国民からしたらより良き国なら問題ないのかもしれないね。


「僕としては、今のクーデター組織に在籍しているスパイの国の中なら、中心人物付近の国がヌロスレアを操るようになってくれれば別に問題ないとは思ってるよ。彼らなら、民を無碍に扱うことはしないだろうし、元々ウチとヌロスレアはそこまで交流もないからね」


サラッと言うけど……その情報と交友関係の広さは流石はヘルメス義兄様だと思う。


「それで、俺は何をすれば?」


スパイ活動でもしろと言われるかと思ったけど、聞いてる限りそれが俺に回ってくることはなさそうだし、何よりヘルメス義兄様がそんな事を頼むとも思えなかったので聞くと、ヘルメス義兄様は少しだけため息をつくと、申し訳なさそうに言った。


「頼みたいのは、シリウス視点で今のヌロスレアを偵察してきて欲しいってことなんだ」

「偵察ですか?」

「うん、そう。情報収集とかではないよ。シリウスの思うようにヌロスレアの王都を歩いて、街の様子を見てきて欲しいんだ」


今ひとつ狙いが読み切れないけど……まあ、返事は決まってるよね。


「分かりました」

「ありがとう。一応、危険はないと思うけど、万が一の時は途中でも中断してすぐに安全を確保するようにね」


聞けば、クーデター組織の影の活躍(他国からの介入)の中に色々と物資の補給などもあって、治安も自警団を組織して王都だけなら比較的安全と言える状況ではあるらしいので、早々問題はないとのこと。


まあ、何かあってもある程度なら対応可能だけど……今回は一人でいいかな。


「それと、この姿絵の人物を見かけたら保護してくれると助かる」

「分かりました」


しれっと追加されたけど……まあ、いいか。


あくまで見かけたららしいし、そうそう会わないだろう……多分。












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