第216話 優秀な上に優しい義兄

「それでだ。シリウスに頼みたいことが二つあるんだけど、聞いてくれるかな?」


ローザ姉様の話で少し盛り上がってから、そんな風に本題に入るヘルメス義兄様。


「お役に立てそうな事でしたら、勿論お引き受けします」

「毎度のことだけど、本当にシリウスは人が良いよね。頼み事をしておいてなんだけど、その人の良さは身内やしたい人にだけにしておきなよ?」

「ええ、そうします」


何でもかんでも、安請け合いする気は無論ない。


前世ではそれが強制だったから仕方なかったけど、今世は選択の自由を掴み取れたのでそれを謳歌するべきなのは自明であった。


まあ、家族の役には立ちたいし、優しい家族のためなら多少の無茶でも引き受けるけど、それは家族や親しい人のみなのは言うまでもない。


「ならよし。それで、まず最初の頼みは今シリウスが頑張っている学園についてなんだ」


学園……?


ああ、そういう事か。


「シスタシア王国の学園の魔法科のカリキュラムについてですか?」

「うん、そう。察しが良くて助かるよ」


それを言うということは、恐らく父様やレグルス兄様達からの許可は得てるはずなので、俺としても断るつもりはないけど……。


「勿論、シリウスにシスタシアの学園に通って、大改革して貰う――とかではないよ。シリウスの考えた魔法科のカリキュラムや教材を参考にさせて貰いたいんだ」

「それは構いませんが……それだけでいいんですか?」


念の為にそう聞くと、ヘルメス義兄様はニヤリと笑ってからそれを口にする。


「あ、もう少し欲を言っていい?なら、シリウスにたまにでいいから、ウチの国の学園の見込みのある講師数人にアドバイスをしてくれると有難いかな。教材だけでカバー出来る範囲ではあるはずだけど、やっぱりシリウスから直接教わる方が早くなるしね」


俺の作った教材のコピーの一部をヘルメス義兄様はレグルス兄様から受け取っており、既に学園の改革にも着手しはじめているらしい。


俺が特別することはほとんど無く、教材の仕様の許可とカリキュラムの相談に乗ることと、見込みのある教師たちの様子をたまに見るだけで良いそうだ。


「シリウスに無理強いはしないさ。シリウスはスレインド王国の学園の改革を頑張ってるし、僕達は僕達でそのシリウスからの教えを参考に勝手にやるから、心配ないよ」


教師の人選から、既に大まかなカリキュラムの草案も纏まってるらしく、帰る前に軽くチェックする約束をするけど……本当に相変わらず有能な義兄で凄まじいね。


まあ、ウチの国も父様やレグルス兄様が凄いけど、ヘルメス義兄様はヘルメス義兄様で若くして国王になってるから、父様に近いタイプなのかな?


何にしても、俺の労力がほとんど要らないようなので断る理由もないので学園改革に関しては承諾する。


にしても……頼りになる義兄というのは前から知ってけど、知れば知るほど凄まじいのは流石としか言えないよね。


その点でいえばウチの家族もそうっちゃそうだけど、マジ尊敬です。














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