第212話 お昼休みの贅沢
「ふぅ……何とか午前中に終わらせられたよ。ありがとう、フィリア」
「いえ、婚約者として当然のことですから」
学園のカリキュラムにガッツリ関わる訳では無いとはいえ、かなり口を出さないといけないとなれば、当然そこそこ俺にもやる事が出来てしまう。
この日は、午前中までに上級生のカリキュラムについて纏める必要があったので、授業には参加せずにそちらをやっていたのだけど、それを手伝ってくれるたのが心優しい俺の婚約者のフィリアであった。
フィリアも俺から教えを受けてるので、今授業をやってる範囲に関してはわざわざ参加する必要もなかったのだけど、俺の仕事を手伝わせる形になって少し申し訳なく思っていると、フィリアはそれを読み取ったように言った。
「私ではお力になれないことが多いと思いますが、シリウス様に頼れらるように私ももっと頑張ります」
「今でも十分頼ってるんだけどなぁ……」
婚約者の中で、一番と言っていい程にフィリアには頼ってると思う。
立場上、俺の正妻ともなると色々と大変なことが多いのに、どちらかといえば内気で大人しいフィリアがそうして俺のために努力してくれてるのは嬉しくもあり、少し申し訳なくもなる。
まあ、とはいえこのポジションは誰にも譲らないけどね。
「じゃあ、頑張ったご褒美に膝枕とかねだってもいいかな?」
「はい、勿論です」
ポンポンと、準備万端といった様子で膝を叩くフィリアに甘えて、ゆっくりとその膝に頭を乗せる。
婚約者になってから、何度も膝枕をして貰っているけど、年々安らぎが増してる気がする……これが癒し系美少女というものだろうか?
「少し髪が伸びましたね」
「そうかも。そろそろ切ろうかな。フィリアはどういう髪型が良いと思う?」
「どんなシリウス様も素敵だと思いますけど、私はいつものシリウス様が一番カッコイイと思います」
頬を赤くしてそんな事を言うので、俺も照れて視線を逸らしてしまう。
「そっか、じゃあいつも通りかな」
「はい。是非そうしてください」
「そうだ。手伝ってくれたフィリアにもご褒美あげたいんだけど……何かある?」
「そうですね……では、一つだけ」
「何かな?」
そう聞くと、フィリアは優しく微笑んでから言った。
「もう少しだけ……このまま、二人きりの時間を過ごさせてください」
「それ、俺のご褒美じゃない?」
「ふふ、これは私のご褒美ですよ」
本当に俺の心を掴むのが上手いなぁ……こうして優しく微笑まれると俺は何も言えなくなるし、その笑みに見とれてしまうのだから我ながら単純だけど、人間の女の子での初恋は伊達ではないのかもしれないなぁ……初恋なら仕方ないよね。
そうして言い訳をしながら、俺は午後のひと時をフィリアとのんびり過ごすのだった。
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