第181話 聖魔を統べるもの
「さて、少し刀身を見ても?」
ラウル兄様がアックスを貰ったと聞いて少しビックリしたはしたけど、まずは折角持ってきてくれた剣をしっかりと見るべきだろう。
そう尋ねるとゾルニは実に嬉しそうに頷く。
「うむ、是非とも見てくれ。しかし……」
「ええ、分かってます」
「……そうか。まあ、ここ剣を知ってたくらいだ。この剣のリスクも十分に知ってるのだろう」
「リスク?何か危険でも?」
少し心配そうに俺の持つ剣を見つめるレグルス兄様。
俺の事を心配してくれてるのが分かって少し嬉しい。
「なに、少しばかり暴れ馬なだけだ。適正のない者は持った時点で多少なり異変が起きるし、刀身を見るために抜くけばその力の奔流が持ち主に向くのだが……まあ、今回はそんな心配は無用だろう」
「……そうですね。でも、シリウスも無茶はしないこと」
「ええ、ありがとうございます、レグルス兄様」
「頼りなくても兄だからね」
そんな風に謙遜するけど、レグルス兄様もラウル兄様も俺にとっては自慢の兄ですよと心から告げたくなる。
まあ、普段から公言してるし今更かな。
そんな事を思いながら少しだけ剣を抜き、刀身を見る。
すると、聖属性と魔属性のそれぞれの力が俺に流れこもうとしてくる。
ふむ、予想よりも強いけど……この程度なら問題ないかな。
そう思って、全ての刀身を鞘から抜き、抜刀する。
鍛冶師の腕がそのまま反映されたように、綺麗な刀身は見ているレグルス兄様さえ感嘆の息を吐くほどであった。
今の俺の体では少し大きく感じられるそれだが、持てないこともないので成長すれば軽く扱えそうで少し有難い。
そんな風に思った直後のこと。
俺に流れ込むのは、先程よりも強い力の聖属性と魔属性の力。
やはり、ゾルニは相当な職人のようで、この剣に宿る力の桁が物凄かった。
凄いな、下手したら神話級の武器に匹敵するんじゃないだろうかとさえ感じられるそれは、ただの聖魔剣の域を完全に凌駕していた。
とはいえ、俺が扱えないレベルではなかったけど。
唸るような力の奔流。
それらを制御してから、剣に力を馴染ませる。
すると、薄らと刀身から白と黒のコントラストが描かれて、一つになる。
その瞬間、聖魔剣は俺の物になった。
使い手を選ぶなんてレベルではなかったなぁと思いつつも、力が馴染み俺の物になっていくのを感じる。
久しくなかった、武器に『認められる』という体験にどこか懐かしくなったけど、今世での感覚で初めて手懐けたのが聖魔剣とは我ながらおかしな話だと苦笑してしまう。
まあ、悪くないけどね。
剣からの威圧感は消えて、全て俺の制御下に入った。
なので、レグルス兄様もその構えは解いても大丈夫ですよ?
レグルス兄様も多少であっても聖魔剣の力を感じたのか念の為が俺から引き剥せるよう構えていたようなので思わず視線をおくると、どこか楽しげに肩を竦めた。
本当に俺はいい兄を持てて光栄です。
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