第180話 聖魔剣
「おお、あったぞ!」
先程買った土林檎のジュースを飲みながらのんびりと待つこと30分ほど。
ドワーフの長のゾルニは目的のものを見つけたらしく、実に機嫌よくそれを持って戻ってきた。
かなり奥にあったのか、何やら汚れやホコリが目立つゾルニ本人は、しかしてそれを全く気にしてなかったが、何となく俺が気になるので、軽く魔法で汚れを吹き飛ばしておく。
「おお、魔法までこのレベルで使えるとは……ますますこの剣を使えそうだな」
そう言いながら、差し出してきた剣は鞘に収まっているのに、明らかに異質なオーラを漂わせていた。
「何だか不思議な剣のようだけど……シリウスはこれが何か分かる?」
「聞いたことはあるのですが、実物は初めて見ました」
「へー、分かるんだ。流石だね」
そう褒めてくれるレグルス兄様だけど、俺としてはむしろこれを作ったというこのドワーフの長に驚いてしまっていた。
「これは、ゾルニ殿がお作りになったので?」
「如何にも。ワシの最高傑作の一つだ」
「それは凄い。まさか、聖魔剣を作り出すとは……」
「ふむ、これが分かるとはお前さんもやるな」
「聖魔剣?」
どこか嬉しそうなゾルニに対して、レグルス兄様は初めて聞く単語に首を傾げていた。
「その名の通り、聖属性と魔属性……相反する二つを組み合わせた剣のことです」
「それは……成立するのかい?」
「普通は無理です。それだけ、ゾルニ殿が鍛冶の才能に愛されてるとしか……」
めちゃくちゃドヤ顔気味なゾルニだが、これは確かに自慢してもいいレベルだと個人的にも思う。
聖という属性と魔という属性……この二つは、相性でいえばほぼ正反対の位置にある力である。
本来、相反する力を共存させることなんてほぼ不可能だ。
余程緻密に制御されてない限りは作れるはずもない代物だけど……ゾルニというドワーフの長にはそれだけの実力があるということになる。
「ワシはドワーフの歴史においても、初代の名工に匹敵する腕を持つと自負しておる。この程度は朝飯前だ」
「それは凄い」
とはいえ、その初代のことを知らないから何とも言えないけど……まあ、ゾルニの実力は本物だと分かった。
これだけの物を作れるからこそ、この人が長をする。
なるほど、鍛冶の腕の良い者が国を仕切るドワーフの国というのは、やはり少し変わってるのかもしれない。
「ちなみに、ラウル兄様とレグルス兄様にはどんな剣を?」
「ん?ああ、僕はレイピアを貰ったね。ラウル兄さんは……巨大なアックスだったかな?」
……ん?アックス?
もしかして、ラウル兄様の部屋に立てかけられてたあれかな?
にしても、レグルス兄様は納得だけど、ラウル兄様は何故にアックス?
まあ、戦斧とか似合うイメージ強いけど……そこは剣でも良かったのでは?
なんて思うけど、聖魔剣を貰った俺が言うのもおかしいか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます