第179話 ドワーフの長

「待っとったぞ、レグルス殿」


ドワーフの長の家は、このドワーフの国の中で一番の規模を誇る鍛治工房であった。


しかし、住居の方への拘りは薄いのか、自室と思われるそこはそれほど広くはない。


なるほど、鍛治が大好きな彼ららしいと少し微笑ましく思いながら、俺はレグルス兄様の案内でドワーフの国の長に会っていた。


「ふむ、その坊主が……」

「はい、弟のシリウスです」

「ほう」


立派な顎髭に、小柄ながらガッシリした体つきのドワーフの長は俺をじっと観察してから「ふむ……」とどこか感嘆の息を漏らした。


「素晴らしいな。この歳で既に完成された器がある。これなら……」

「ゾルニ殿、まずは自己紹介をさせて下さい」

「そうであったな。では、ワシから」


ゴホンと咳払いをすると、ドワーフの長は実に厳かな声を作って名乗る。


「我が名はゾルニ。一応この国の長任されとるが、ただの鍛治好きのジジイだ」

「初めまして。ゾルニ殿。私はスレインド王国第3王子のシリウス・スレインドと申します」


厳かな声を作った割には簡潔かつ、ぶっちゃけたなぁと少し感心していると、俺の全身を眺めてゾルニは尋ねてくる。


「ふむ……シリウスとやら。お前さん剣の腕は?」

「程々でしょうか」


そこそこ自信はあるとはいえ、前世の身体の方が圧倒的に剣技には向いてたしその頃の力を出し切るには今の体は幼すぎる。


まあ、俺には女神様から貰った変身時計があるので変身すれば前世の英雄時代の力も出せるとは思うけど、それを言うかは迷いどころ。


とりあえず、普通に答えるとゾルニはしばし考え込んでから、隣の部屋へと向かった。


「ははは、僕らの時も似たような感じだったなぁ」


初対面で放置は基本のようだ。


「ちなみにその時のこの後の展開はどうなるのです?」

「それは……少し待てば分かるよ」


勿体ぶるようにそうはぐらかすレグルス兄様。


それが様になるのだから、イケメンであるレグルス兄様は凄いと思う。


そんな兄に関心しながも、部屋の中を軽く観察するけど、やはり鍛冶に関してのものが多いかな?


それ以外はあまり物は多くない印象を受ける。


そうして観察しながら数分待つが、隣の部屋では何やら時折派手な音が聞こえてくる。


何かを探してるのだろうか?


「もう少しかかるかな」

「では、大人しく待ちましょうか」

「シリウスは偉いね。ラウル兄さんは覗きに行こうとしてたよ」


まあ、あれだけ派手な音をさせていれば気にもなるだろう。


とはいえ、前世で会ったドワーフにも似たような人柄の人が居たのを思い出して俺は少し微笑ましくなる。


世界が違っても、似るものはあるのかもしれない。








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