第182話 予想外とワクワク

「……見事としか言えんな。ここまで容易く手懐けるとは思わなかったぞ」

「成功したのかい?」


心からの賞賛を贈ってくるゾルニと、首を傾げているレグルス兄様。


ゾルニの言葉には、心底驚いたような旨と、それ程の使い手に久しぶりに会えたというようなご機嫌な色が見えた。


「何だか、さっきまでのピリピリした空気は消えたけど……どうなんだい?」


ふむ、やはりレグルス兄様にも多少聖魔剣の力が感じられたようだ。


それが消えたのでどうなったのか気になるのは当然かもしれない。


「ええ、問題なく。完全に聖魔剣をモノに出来ました」

「そうなんだね、それなら良かったよ」


俺の無事に心から安堵してくれているレグルス兄様は本当に優しくて最高の兄だと思う。


「それにしても、本当に綺麗な剣だね」

「鍛冶師の腕が良いからでしょうね」

「当たり前だ。ワシは最高の職人だからな」


自信満々にドヤ顔気味のゾルニ。


オッサンのドヤ顔は何度も見たいとは思わないけど、誇れることではあるので仕方ない。


「それで、使い心地はどうだ?」

「さて、まだ振ってませんからね」


あくまで俺は、剣の力を制御下に置いただけで、まだ剣自体の使い心地は確かめてない。


この件の秘める聖魔の力は凄まじいけど、剣自体の素のスペックなんかはまだ試してみてないので何とも言えない。


まあ、絶対悪いとは思わないけど。


「なら、外で是非とも見てみよう」


そう言うとそそくさと出ていくゾルニ。


その足取りは心做しか軽そうに見えた。


「何だか楽しそうですね」

「シリウスが想定以上の使い手で嬉しいのかもね」


まあ、俺は少し特殊だから、俺よりも使える使い手が居るとは思うけどね。


「俺達も後を追った方がいいですかね?」

「そうだね、付き合ってあげた方がいいかもしれないね」


大人な意見なレグルス兄様。


長生きなドワーフよりも、好青年な若者のレグルス兄様の方が大人なのは、種族による違いだろうか?


案外、長い時を生きるにはなるべく無垢で自由な方がいいのかもしれない。


逆に、限られた時しか生きれない人間は大人びていく……まあ、完全に予想と持論が混じったものだけど、案外正しいかもしれない。


俺は剣を鞘に収めると、レグルス兄様と並んでゾルニの後を追う。


「にしても、今日は本当に楽しそうに見えるよ」

「そうなんですか?」

「うん、自分の作品や鍛冶以外にはあまり関心を示さない人だからね」


見た目通りというか、予想通りな職人気質のようで、そんな彼の楽しそうな様子は久しぶりだとレグルス兄様はくすりと微笑んだ。


その笑みを街で見せれば、またドワーフのお嬢様方を虜にしてしまうのだろうが……自覚のないイケメンのナチュラルスマイルは凄まじいですね。


とはいえ、レグルス兄様はその辺の計算はあまりしない人なので信じられる素晴らしいお兄様です。






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