第175話 違和感の正体

「中々凄いでしょ?」


レグルス兄様が楽しげにそんな事を言う。


「ええ、どの武器も凄いですね」


戦後に没落した鍛治貴族の名剣に、少し特殊な属性魔法を込めた武器。


美術品としての価値の計り知れないものから、騎士や戦士にとって憧れの武器に、更にはとてつもなく強力な武具なんかもあって、それらだけでもこの部屋は宝の山と言えるだろう。


「あ、やっぱりシリウスには分かるんだね。ラウル兄さんも最初にここに来た時は凄いテンションだったよ」


その光景が目に浮かぶ。


戦うのが好きなラウル兄様なら、ここの武器はどれも魅力的で、実に良いのだろう。


「僕としても、ここの武器は有事に色々と使えそうで助かるよ」


売るなり、兵に持たせるなり、色々と出来そうだとレグルス兄様としては保険としては悪くないのだろう。


「気に入ったのがあったら、持っていてもいいよ。何を持っていったかは僕が父上に報告しておくし」

「それは大変魅力的なお話ですが……」


俺はそっと、歩き出すと部屋の中心に立って、床をに手を触れてみる。


すると、俺の魔力を吸い上げて、ギミックが発動して、地下へ続く階段が姿を表す。


「先に、こちらを見てみたいのですが、いいですか?」

「……凄いな、一発で見抜くなんて」

「何となく部屋に違和感を覚えたので」


この手のギミックは、地下遺跡などではよくあるし、俺としては何度となくそういった経験を前世でしたせいか、今では部屋を見ただけである程度の見抜けてしまうレベルになっていた。


まあ、全く誇れないけど。


「僕とラウル兄さんが最初に来たときは、それには気づけなくてね。これだけの武器があれば当然そちらがメインだと思って、本命のギミックを見落としてしまう……まあ、父上の受け売りだけどね」


なるほど。


宝を隠すなら何重にもして、本命を悟らせないことが最善なのだろう。


「それに、先程父様に頂いた、鍵の使い道がまだなので」

「それもそうかもね。ちなみに、その鍵で開けられるダミーの宝箱があっちの棚に隠されてるから、後で見てみるといいよ」


視線を向けると、確かにそれらしい宝箱が隠されてるようであった。


あー……つまりレグルス兄様がそれを言う前に俺がこの先に続くギミックを暴いてしまったということか。


気の利かない弟で本当にすみません。


そんな可愛げのなさそうな弟に気分を害した様子もなく、レグルス兄様は颯爽と地下へと降りていく。


俺もその後に続いていくが、予想以上に長い階段に少し驚く。


足腰を鍛えるには向いてるし、確かにラウル兄様としては上の武器庫と共によく通うのは頷ける場所ではあった。


「着いたよ。このドアにさっき父上から貰った鍵を使ってみるといいよ」


そう言われたので、素直に使ってみる。


ガチャリと、重厚な音を立ててロックが開く。


重く分厚い扉を開けると……その先には、大きな都市が広がっていた。


「ようこそ、地下の世界――ドワーフの国へ」


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