第164話 エルフ姉妹と雑務
「シリウスくん、はいお茶」
「ん、ありがとう」
領主館の執務室にて、本日は溜まっているお仕事をちゃっちゃか消化していた。
学園卒業まではある程度任せてしまう部分が多いとはいえ、こちらに住むようになったので出来ることはしないとね。
そんな心持ちで仕事を捗らせていると、セリアがお茶を淹れてくれたようで有難く頂く。
「……うん、美味しいね。でも、セリアまた何か入れたでしょ?」
「あははー、まあねぇ。シリウスくんの健康に気を使ってみたんだー」
……喉に痺れるような違和感、これは多分ハミリアという植物によるものだな。主に麻酔薬の材料になるものだけど、使い方によっては効能の高い滋養強壮剤にもなるもの。
なるほど、後者の知識があるから入れたのか。
エルフであるセリアは、知識もかなり深く、器量の良い天才なのだが、料理に関しては少しだけ人からすると絶望的なセンスであったりする。
典型的なアレンジによる失敗が多いのだが、お茶を淹れる時にもそれは発動するらしい。
「もしかしてまたダメだったかなぁ?」
少し不安げなセリアだが、それに俺は微笑んで答える。
「悪くは無いけど、もう少し素材の味を楽しみたいかな。淹れてくれた分は有難く貰うよ」
「えへへ、分かった!」
実に良い笑みを浮かべるセリア。
確かに、独特な味わいで万人には受けないだろうが、俺のために淹れてくれたのだから飲まない理由はない。
多少喉が痺れるけど毒ではないし、飲めなくないので、味わって飲む。
こんなに好意全開で淹れくれたのだから、有難く頂かないと申し訳ないし、気持ちは凄く嬉しいので素直に受け取らないとね。
「シリウス、もう少し断ることもしていいんだよ?」
こっそりと、そんな事を言うのはセリアの姉のスフィアであった。
妹の料理センスに関して、良く理解しているので、俺みたいにお茶を貰っては居なかったが、明らかに色合いがヤバいと見て分かったのか不安げだ。
まあ、でも俺の場合は何を食べようとも死ぬことは早々ないので、その辺は安心させておかないとね。
「別に飲めなくはないから大丈夫だよ。でも、せっかくだしスフィアのお茶も後で貰えると嬉しいかな」
余裕を見せつつ、スフィアのお茶も強請ってみる。
すると、スフィアは少し驚いた表情を見せたあとで、くすりと笑うと言った。
「もう……シリウスってば、相変わらずだね。それにやっぱり変」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「でも、うん……ありがとう」
元気な妹の様子に嬉しそうなスフィア。
1度は別れることになった妹と今こうして平和に過ごせている……それにとても満足しているようで、俺としてはそのスフィアの様子だけで色々お節介したかいはあったと満足しながら少し喉が痺れるお茶を飲んで仕事を再開する。
俺も頑張らないとな。
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