第163話 ハーフエルフは甘えたい

『ご主人様、今いいですか?』


ウチの名産品である、白銀桃を使った饅頭を試作していると控えめながらどこか期待するように声をかけてくるハーフエルフのソルテ。


『ん?うん、何かな?』

『その……ご主人様が恋しくなって……』


何とも愛らしくそんな事を言ってくるソルテ。


同性でさえきっと、キュンとするのは間違いないそれだが、俺としては慣れていてもやはり可愛いと思う。


最近はエルフの姉妹……スフィアとセリアがエルフ語を話せるので妹のように可愛がって貰っているのは見ていたが、ソルテ的には俺の方が優先順位が高いのか、ガッツリ甘えてくるのは俺に対してのみであった。


依存には近いけど、最近はそれでも自分なりにソルテも人と関わろうとしているので心配はしていない。


それに、別に俺としては依存も悪くないとは思うのでソルテが望むなら望むだけ与えたいという気持ちであった。


『試作品だけど、白銀桃の饅頭食べながら話そうか』

『……!はい!』


まるで遅れていた成長が一気に来たように日々魅力的な女の子になってきているソルテ。


それでも、まだまだ深く残る傷は心にあるし、それらが癒えるのはまだまだ先のことでもある。


ただ……それでも、この子を笑顔にできるなら俺は何でもするつもりであった。


婚約者になる前よりもその気持ちは強くなったが、この子には笑顔が良く似合う。


『皆とは仲良くやれそう?』

『はい、皆さんお優しくて……あと、私と同じで心からご主人様のことが好きだって分かるから、だから凄く嬉しいんです』


……こういう事をさらっと言えてしまうのがこの子の天然小悪魔な部分だと思う。


そこにあるのはただただ素直な気持ちなので、接していてとても癒されるものだが、こういう素直で純粋な子が正しく成長出来る世の中……それに近づけるようには頑張りたいなぁと、分不相応ながらも思ってみたりする。


『ご主人様』


そっと、俺の肩に身体を預けてくるソルテ。


甘えたいのだろうと分かるので、好きなようにさせておくが、日々可愛くなるのでドギマギ具合の上昇値は高めになってきている。


これはあれだね、将来的に無防備な姿を晒して俺を翻弄する小悪魔になれる素質もありそうだが……他の婚約者達も似たような素質がある子が強いし、俺ってそういうタイプが好みなのかと錯覚しそうになる。


『ソルテ、いつだって甘えたい時は言ってよ。絶対ソルテのこと拒まないからさ』

『……はい、ご主人様』


エルフ語にも慣れたものだが、こうして甘えてくるソルテにも慣れたものだ。


まあ、慣れと魅力によるドキドキはまた別ではあるが……何にしても、試作品の白銀桃の饅頭の甘さはほど良かったとだけ言っておく。


これは売れるな。


売るかは知らないけど、母様辺りにバレたら売ることになりそうではある。





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