第162話 平和とは
「平和だなぁ……」
「そうですね」
俺の言葉にニッコリと微笑みながら頷くフィリア。
フィリアの淹れてくれたお茶は本当に美味しいなぁと思いつつ、俺は窓の外の景色を眺めて一息つく。
ここ最近は出掛けすぎてたし、こうしてのんびりするのも悪くないな。
「やりますね、シャルティア殿!それでこそシリウス殿の騎士です!」
「シエル殿こそ見事!」
外の訓練場にて楽しげに剣を交えるのは、俺の騎士のシャルティアと、先日奉公として俺の元に預けられたダークエルフのシエルであった。
努力の末か、昔よりも強くなったシャルティアはシエルと楽しげに剣を交えているが、気質が近いからか気が合うようで、ここのところ毎日のように稽古をしてるようだ。
まあ、本人達が満足してるなら優しく見守るのが良さそうかなぁと俺としては思うのでそれらをのんびりと見守る。
「シエルさんもお強いですね。ダークエルフの方は皆さんシエルさんみたいにお強いんですか?」
「んー、族長とシエルの父親なんかは凄く強いよ。他はそこまで知らないけど、ダークエルフはスペックが高いからねぇ……あ、フローラ。頼まれてた本借りてきたよ」
「わぁ!ありがとうございます、シリウス様」
嬉しそうに受け取るフローラ。
空色の瞳が輝いてることから、余程楽しみにしていたことはよく分かるので微笑ましい。
渡したのはダークエルフの里の歴史に関する書物である。
読書好きなフローラのために、ダークエルフの族長に掛け合ってみたのだが、割とあっさり許可を貰えたのでこうして持ってきたのだ。
「面白そうですね。後で見せてくださいねフローラさん」
「はい!勿論ですフィリアさん」
俺の婚約者の銀髪美少女フィリアと空色美少女フローラは本日も仲良さそうで微笑ましいものだ。
「人間さん、人間さん」
見目麗しい婚約者の美少女で癒されていると、妖精のミルが時計を指して催促してくる。
ミルが求めるもの……無論、お菓子だ。
おやつの時間をきちんと覚えたようで、人間の時間感覚を把握してきたとも言えるが、それにしても余程の楽しみなのかワクワクした様子で求めてくるので何とも和む。
「そうだね。おやつにしようか」
「わ〜い。人間さん、今日のおやつはなんですか〜?」
「シュークリームだよ」
「ふわしゅー大好き〜」
最近は手に入ったばかりの食材で和菓子が多かったので久しぶりに洋菓子にしてみたが、謎の単語で覚えているくらいにはミルはシュークリームも好きらしい。
俺の言葉にフィリアとフローラも微笑みあっているので、本当に女の子は甘い物が好きなのだなぁと微笑ましくなる。
「シャルティア、シエルおやつにするよー」
外の剣戟に掻き消されるくらいのトーンの普通の呼びかけ。
絶対に届くはずのない俺の言葉なのだが、シャルティアとシエルの場合は余裕で聞こえるのか、きちんと伝わったようで、2人とも毎度の如く、直ぐに訓練を終えてこちらに来るので不思議なものだ。
シャルティアの場合は、セシル曰く「愛の力」らしいし、シエルは「普通に聞こえる」らしいので、2人ともやはり凄いと思う。
何にしても、平和が一番だと思いながら、ゆったりとする本日も悪くない。
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