第141話 その一言が嬉しい
「ふむ……なるほど。どうやら、我々の理解の範疇を遥かに超越した存在のようだな」
一通りの説明を終えると、そう結論付ける父様。
仮に妖精の力を手に入れても、手に余るのが現状だと分かったようで、その辺は流石と言えた。
「それで、シリウス。この子はシリウスが保護するんだよね?」
「ええ、それが本人の意思ですし、俺もそのつもりですから」
俺の答えに、何故かドヤ顔で「えっへん」と胸を張るミル。
君が自慢する要素が今の言葉に含まれていたのだろうか?
うむ、女の子とは謎である。
「まあ、シリウス以外じゃこの子を守れないし、いざって時にも困るもんね。じゃあ、シリウスはこの子もお嫁さんにするのかな?」
「そうですよ〜」
……おいおい、ミルさんよ。
嫁の意味を知ってて答えたのかい?
「じゃあ、妖精と人間のハーフが家族に出来るんだね。あ、でも、人間と妖精で子供って作れるの?」
「大丈夫ですよ〜。元々、私達には不要なので、備わってないものですけど、少し力を使えばその程度はわけないですよ〜」
「へー、じゃあ、君とシリウスの子供……僕にとっては、甥になるか。楽しみにしてるよ」
「がってんです」
外堀を埋められることの怖さを実感しつつも、何かを考えてさっきから黙りな父様に視線を向ける。
すると、父様は俺の視線に気づいたのか、「こほん」と咳払いをしてから、言った。
「何にしても、この事は極秘事項としよう。我が家とシリウスの婚約者以外には絶対には漏れないよう徹底しておく」
「すみません」
なんかもう、面倒事ばかり持ってきて本当に申し訳ない。
「気にするな。こういう時くらいしか、父親らしいこともしてやれないからな」
「そんな事ないです。父様はいつだってカッコよくて、この国や家族、国民のことを想っている……俺にとって、父様や母様、それに兄様達や姉様達も最高に自慢できる家族なんです」
「シリウス……」
少し驚いた表情をしてから、表情を緩めると立ち上がって、俺の頭を撫でる父様。
「……そうだな。お前達が自慢できるような、尊敬されるような存在であるべきだな。だがな、シリウス。私にとっても、お前たちは宝物だ。皆が自慢の子供であり、愛すべき家族。だから、こんな時くらいは存分に頼りなさい。それが父親というものだからな」
「……はい。ありがとうございます」
不意打ち気味なそんな言葉が、胸に染み入る。
自慢か……そんな風に言って貰えるように、俺も頑張らないとな。
「シリウス。気になったんだが……」
そんな事を思っていると、話の間ずっと黙っていたラウル兄様が何かを言おうとする。
やっぱり、妖精の存在は流石のラウル兄様でも困惑しているのかと思っていると、ラウル兄様はそんな俺の予想の斜め上をいくことを口にする。
「ダークエルフってのは、どのくらい強いんだ?お前の話だと、族長が凄腕らしいが、武芸も出来るのか?何にしても、一度連れてきてくれ!もしくは俺を連れ出してくれ!」
……うん、この人はこういう人だったな。
妖精の存在の有無なんかよりも、強い相手が気になるゴリゴリの体育会系。
「えっと、ダークエルフ達はウチの国の騎士よりも強い人はかなり居ますよ。でも、ラウル兄様のお眼鏡に適うのは、族長とその息子のエデルくらいでしょう」
ラウル兄様は、贔屓目なしでも、人間では最強に近いので、それにかないそうなのはやはり上位の2人くらいだろう。
あとは、期待できそうなのは、エデルの娘さんかな?
ラーニョセルペンティの時は、エデルの配慮で里を出ていたので会ってないが、エデルの話ではかなり強いらしい。
「おお、そいつは楽しみだな!頼んだぜシリウスよ!」
「ええ、分かりました」
そうして、すんなりと話は終わり、軽く雑談をしてから次の目的地に向かうが……なんというか、信頼されてるっていいものだとしみじみ思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます