第140話 末っ子という好ポジ

「やあ、シリウス。何だか色々あったそうだね」


翌日、婚約者達に癒されて、本日も朝のベッドの上の人口密度が物凄かったが、それらを堪能してから、俺は父様とラウル兄様、そしてレグルス兄様の元を訪ねていた。


昨日のことと、ミルのことを話せる範囲で家族には話しておくためだ。


執務室に入ると、人払いを既に済ませているようで、レグルス兄様に笑顔で出迎えられる。


レグルス兄様には既に、昨日のことを簡単には報告しているのだが……予想はしていたが、眉唾にも思えそうな話を信じてくれてるようでホッとする。


おとぎ話のようなレベルの妖精の話を聞いても、今世の家族なら他所に漏らしたり、悪用することはないだろうし、仮に漏れても何とでもなるので、安心して話せるというもの。


やっぱ、今世の家族は最高だね。


「軽い報告はレグルスから受けてはいるが……いやはや、家を出て数日で大事に巻き込まれるとは思わなんだぞ」


父様にもそんな事を言われてしまう。


確かに、俺も予想外ではあったけどね。


「お待たせしました。父様、ラウル兄様、レグルス兄様」

「時間はピッタリだから、問題ないよ」


そう微笑むレグルス兄様。


ここ数年で、更に磨きがかかったイケメン度合いのレグルス兄様だが、こういう優しいところは変わってなくてホッとする。


その微笑みは、既婚者独特の色香もあってか、さらに女性人気が年々高まってるらしいが、本人的にはこれ以上嫁は増えて欲しくないので、自身の魅力に困惑してる節があるらしい。


イケメンも大変そうだよね。


「うむ、息災そうで何よりだ」


父様は変わらず渋いイケメンさんだ。


母様ともラブラブなようだし、その母様も俺がどれだけ成長しようと全く老けないので、むしろ俺よりも母様の方が何かしら特別な加護でも持ってるように思えてならない。


素でそれなら、恐るべし我が母。


何にしても、父様も元気そうで良かった。


……まあ、家を出る前に会ってるし、数日ぶりくらいだけど。


「おう!元気そうだな!」


最後に、俺の頭をワシワシと子供の頃から変わらずに撫でるラウル兄様。


形としては、王太子はラウル兄様だが、本人はそのカリスマで皆を導き、細かい頭を使ったり駆け引きをするのはレグルス兄様の役目なので、上手いこと兄弟で補完できてるようだ。


三男の末っ子の俺は余りだけど……2人ほどのスペックもないし、そのくらいのポジションで2人を支えるのが丁度いいだろう。


「ラウル兄様、痛いです」

「なんか、また背が伸びたな!まだまだチビだが頑張れよ!」


まあ、この歳にしてはあまり伸びが芳しくないが……ラウル兄様はあまり嘘をつかないし、その言葉は少し嬉しかった。


「それで、その件の妖精さんは?」

「ここに居ますよ……ミル、出てきていいよ」

「ふぁーい……」


俺の懐に隠れていた、ミルに声をかけると、少しウトウトしていたのか、眠たそうに返事をしながらはい出てくる。


思ったよりも、居心地良かったのだろうか?


「わ、本当に妖精さんっぽいね」

「む〜、ぽいじゃなくて、本物ですよ〜」

「すまない、そうだよね。じゃあ、話を聞かせて貰おうかな」


興味津々といった様子のレグルス兄様に、珍しいことに少し驚いている父様、そしてミルを少し観察してから、とりあえず弟に構うことにした様子で俺の頭に手を乗っけてくるラウル兄様。


三者三様だが、俺よりも多忙なはずの3人の時間を奪わない程度に俺はレグルス兄様に上げた報告よりも少し詳しく、話せる範囲で昨日のことを話す。


婚約者達への説明で、要点を掴めたし前よりもスラスラ言えたが……うむ、我ながら成長出来てるようで良かったよ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る