第139話 やはり正妻さんは勝つる

「シリウス様、こちらへ」


夕飯も終わり、お風呂の時間……となったのだが、当然結婚前なので、婚約者との混浴はもうしばらくお預けなのだが、大人になるのが日々待ち度しくもある今日この頃。


ようやくこの歳になって何とか勝ち得た1人での入浴を楽しんでから、部屋へと戻るとそこには既に湯浴みを終えたらしいフィリアが待っていて少し驚く。


「フィリア、お風呂はもう済んだの?」


この屋敷には、男女別のお風呂と大浴場があるのだが、本日は婚約者達に大浴場を譲って、大浴場より少し小さいが、中々に広く居心地の良い男湯を俺は使用した。


我ながら、贅沢な話だが、肩まで浸かってリラックスするのが好きなので、そこそこ長湯をして、お風呂を満喫したのだが、それでも女性の湯浴みの時間と比べれば些細な時間しか浸かってないはずなのに、既に就寝の準備を終えてそうな寝巻き姿のフィリアさん。


俺の入浴と同じようなタイミングで大浴場に向かったはずなのだが……俺より早く帰ってきてる、これ如何に?


「はい、とはいえ、シリウス様のお帰りの前にお時間を少し貰って一度入ったので、シャワーを軽く浴びたくらいですが……シリウス様の魔道具は本当に凄いですね。髪が直ぐに乾きます」


ドライヤーなども、前にスフィアとの遺跡探索で発掘したのだが、それに似せた商品を密かに母様手動で開発しているのだが……まあ、それは今はいいか。


「そっか、えっと……隣に行けばいいのかな?」

「はい、こちらへ」


ソファーに座っている、フィリアの隣に座る。


何をしてくれるのか、少しドキドキしていると、フィリアは、膝枕で耳掻きをしてくれた。


うーむ、そこそこ頑張ったので、フィリアからこうして甘やかされるのは本当に癒されるものだなぁ。


「……シリウス様、ダークエルフさんのことも、妖精さんのことも、皆さんには少し控えめに話しましたよね?」

「ん……まあ、そうかも」


やはり、バレバレであったか。


かなりオブラートに包んで、それこそ面倒事の部分なんかはライトに伝えたのだが、フィリアにはバレバレであったらしい。


我ながら演技や嘘はそこそこ上手い方だと思っていたのだが……愛しい人には通じないようだ。


それが嬉しくもあり、少し気恥しいが、心地良さに俺は身を任せる。


そんな俺にフィリアは微笑んで言った。


「妖精さんのこと、ミルさんのこと、ダークエルフさんのこと……シリウス様は色々と抱え込みやすいのかもしれませんが、私はシリウス様のお側で、それらで疲れたシリウス様をこうしてささやかながらお支えさせて頂きます。だから……疲れた時は、私に弱いところも見せてください。どんなシリウス様でも私は……愛してますから」


……あー、もう、本当にこの子には勝てそうもないや。


前世のように無茶をしようとしても、きっと見破られる。


カッコイイ姿を見せたいのになぁ……


「……分かった。じゃあ、皆が上がるまで……このままいいかな?」

「はい。是非」


そうして、俺はしばらくフィリアの膝の上で寛ぐが……そうしてると、今日一日の疲労が嘘のように消えていくのだから、不思議だ。


その後、本日も婚約者全員で寝ることになったのだが……他の婚約者達も、俺の本日の頑張りを、それとなく察したように、俺を癒したい気持ちがそれとなく伝わってきてなんだか嬉しくなる。


やっぱり、ここが俺の帰るべき場所なんだろうと、そう思いながら、俺は婚約者に囲まれて、ゆっくりとまぶたを閉じる。


明日も楽しい日々になりそうだ。








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