第138話 彼女達の器の大きさ
「妖精さん……ですか……」
人払いをしつつ、婚約者全員を集めて、俺は今日あった事を多少やんわりと、なるべく軽く説明して、そして一応秘密であることを強調しながら、ミルについて説明してみた。
その結果、フィリア達のリアクションは何とも言えない……そう、困惑と言うべき表情になってしまったが、まあ、妖精なんて普通に考えてこの世界でも創作の類なので、この反応は想定内であった。
「凄いなぁ……シリウスくん、妖精さん見つけるだけじゃなくて、連れてくるなんて……流石私達の旦那様だね!」
……まあ、この反応はちょっと想定外でもあったが。
その発言は、エルフの姉妹の妹のセリアによるもの。
流石はエルフというか、スフィアとセリアは妖精の存在もそれとなく知っていた……というか、勘づいていたようで、困惑よりも驚きが打ち勝っているようではあった。
「おとぎ話みたいですね……でも、何だか可愛いです」
「ええ、シリウス様と居ると絵になりますね」
受け入れるまでの時間はそう長くなく、フィリアもフローラも楽しげにそんな感想を漏らす。
『ご主人様、お代わりをどうぞ』
話を聞きつつも、ソルテは俺を信じきっているのか、特に驚きはせず、さりげなく空いてるカップにお茶を注いでくれた。
ソルテも逞しくなったものだなぁ……なんか感慨深くなるよ。
「人間さん、この部屋の人達、皆、人間さんのご家族?」
「そうだね。さっきも言ったように婚約者達だよ。皆俺の自慢の奥さんたちなんだ」
その言葉に、皆が少し照れたような様子を見せるが、比較的軽傷なスフィアが「こほん」と、軽く咳をして場を整えるように言った。
「何にしても、シリウスが良いなら私達は受け入れるだけだけど……シリウスが最初に言った通り、この事はこの屋敷の人間以外には秘密がいいでしょうね」
事の大きさにも動じずにそんな事を言えるのだから、スフィアはやはり頼りになるものだ。
「そうですね。では、皆さん。口外はしないように。特に、セリアさんとシャルティアさんはお気をつけて」
「勿論です」
「はーい」
フィリアの軽い注意に、自覚があるのか頷く2人。
シャルティアは嘘が下手だし、セリアはたまに口が軽くなるが、まあ、この位の重さの話しならそうそう漏らすこともないだろう。
フィリアも分かっているので、念の為に言ったのだろうが……流石は俺の未来の正妻。
銀髪オッドアイの美少女ってだけで最強なのに、更に正妻の地位すら安定なしっかりとした性格をしていて、尚且つ俺を癒してくれる存在。
うむ、人間の初恋がこの子で本当に良かったよ。
「まあ、そんな訳で、これから一緒に住むことになる妖精のミルです」
「どうも〜、よろしくです〜」
その後、ミルのことを皆に紹介して、ミルに皆を紹介すると、あっという間にミルは俺の婚約者達と仲良くなった。
本当に人懐っこい性格だこと……少し羨ましくなるが、まあ、俺のコミュ力はもうこれ以上上がらないだろうし、羨むだけ無駄かな。
特に、フィリアには何か感じるものがあったのか、よく懐いているように見えたが……俺と同じく、餌付けを用いている辺り、やはりミルにはこれが効果的なのだろうと思えた。
そんな訳で……妖精さんを連れ帰りつつも、予定外のお出掛けもようやく落ち着きを見せたのであった。
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