第23話 召喚獣と召喚術
「ここでいいかな?」
領地から少し離れた森の中。
魔物が居るが、サクッと倒して空間魔法に保存してお金が必要そうなら売ろうと思いつつ、俺は魔法を発動させる。
『召喚術――ゴーレム』
ゴゴゴっと、召喚陣を潜って出てくるのは3メートル近いゴーレム。
どうやら、成功のようで一安心する。
かつて、英雄だった前世のこと。
魔法の中でも、古代魔法と呼ばれていた魔法があった。
召喚魔法――召喚術と呼ばれるそれらは、契約を結んだ相手を呼び出す効果がある。
そしてその効果は、例え異世界であっても有効だ。
呼び出されるのは、召喚相手本人ではなく、それを魔法で作った器に憑依させるというものなので、例え次元が違っても呼び出せるという訳だ。
まあ、多少召喚時の消費魔力は増えるが、お手軽に助っ人を呼べるのは助かる。
最初は、意志を持たない命令に忠実な召喚体を選んだが、上手くいって何よりだ。
さて、次はっと……
『召喚術――フェニックス』
真っ赤な召喚陣から、ファンタジー定番の不死鳥が姿を見せる。
真紅の綺麗な翼と誇り高いその瞳。
大きさは、俺を抱えて飛べるほどに大きい。
ちなみに、コンパクトサイズになることも出来るというオプション付きだ。
涙はどんな傷や毒をも癒し、炎の息は如何なる者でも焼き尽くすことが出来るらしい。
「久しぶり」
声をかけてみる。
フェニックスは俺の瞳をジーッと見つめてから、小鳥サイズに変化すると、肩に乗ってきた。
そういえば、転生して姿変わってたけど……俺だって分かったみたいだ。
まあ、召還契約の相手だし姿形が変わっても分かるのだろう。
その後も、ユニコーン、ペガサス、グリフォン、ヴィーヴル、ヒポグリフ、バイコーンと召喚していく。
バジリスク……は、少し苦手だけど、慣れると意外と可愛い。
陸地で召喚可能なメンバーで、意志を持つ子達は俺だとすぐに分かるようで甘えてくる子が多かった。
水辺とか、限られた気候でのみ召喚可能なメンバーには、後々挨拶をすることにしておく。
決して、飽きてきたとかじゃないよ?
仮にもぼっちな俺の数少ない友人兼子供のような存在を邪険にはしない。
ただ、一体一体が、それなりに甘えてきて、時間がかかるのは確かだ。
とりあえず、主要メンバーをメインにして、残りは後日だな。
ほぼ、全員を召喚出来ることを確認してから、俺は次に召喚獣を呼び出す。
召喚術と召喚獣、同じもののようだが、少し違うのだ。
召喚術とは、契約相手を魔力の器で顕現させることを言い、召喚獣は自分の魔力から守護者を生産することを言う。
守護者――ガーディアンとも言える存在は、自然界の生物の形を原則として作られて、個別に意志のようなものも見られる。
そう――例えば、俺が今召喚した白熊のようなものだ。
「がふ」
召喚された白熊は、近くの茂みに潜り込むと、近づいてきていたウルフを仕留めてきた。
うん、上出来だな。
そして、俺は次の召喚体を選ぶ。
人間も一応自然界に存在する存在。
そして、人間の最も強き形、肉体的な意味で言うなら、騎士が最もベター。
そんな訳で、白騎士とかも呼び出せる。
何故連続して白なのか?
特に意味は無いが、白シリーズの召喚獣が気に入ってるからだろう。
そうして、召喚獣の実験も終わり、一通り確認は済んだ。
なので、そろそろ帰りたいのだが……
「フレイアちゃんや、そろそろ戻らない?」
そう、俺の肩の上のフェニックスに聞くと、ツンツンと抵抗するように俺の頬を優しくつつく。
意思のある召喚体の子には名前をつけてるのだが、フェニックスの名前はフレイアちゃん。
ちゃん付けなのは、この子は雌だからだ。
フェニックスに雄が居るのか知らないけど、この子は雌だったので、居るのかもしれない。
ちなみに、フェニックスのフレイアちゃんと同じように抵抗して今も俺の隣にいる召喚体が2体いる。
ペガサスとユニコーンだ。
ペガサスの名前はクイーン。
ユニコーンの名前はナイトだ。
ユニコーンなのにナイトは、男の俺に懐いていた。
ユニコーンは本来、清らかな乙女にしか懐かない――どころか、清らかな乙女の前以外には決して姿を見せないそうだが、ナイトは今も俺に甘えてきてる。
……決して、女顔だからとかじゃないよ?
ペガサスのクイーンも俺を乗せて満足気な顔をしていて帰ってくれる感じはない。
可愛い子達だし、俺も側に居てくれるとぼっちの時間が減るのだが、流石にフェニックスとペガサスとユニコーンを連れ歩くと、面倒なことが起きる気しかしないので仕方ない。
せっかく、王位がラウル兄様に決まって、その補佐をレグルス兄様がするといういい感じの結末になったのに、俺が下手にそうして力を見せびらかせば、ケチを付けたがるバカが現れそうだからだ。
うん、本当に貴族って面倒。
俺の領地や、家族のフォローが無いところ、または、全く俺を知らない土地か、俺が変装しない限り、大っぴらには力は使えない。
まあ、必要なら使うけど。
バカ貴族達には「勘違い勘違い。同行者が強かったからね」としらを切るつもりだ。
そうして3匹と格闘すことしばし、妥協案として、3匹とも小さくなって変装の術を使って過ごすということで決着がついた。
フェニックスのフレイアちゃんは、俺の頭の上か肩が定位置に。
ペガサスのクイーンは俺の腕の中か、フレイアちゃんが頭に居る時は、某、国民的黄色いネズミのように肩に乗ることになった。
凄いよね、あの主人公。
肩の上にそこそこの重量の生き物を乗せて走ったりジャンプしたり、人間業じゃない気がする。
ちなみに、ユニコーンのナイトは俺と女の子以外の前だと透明化で消えてしまうので、部屋でしかまともに見ないことになるのだった。
なお、そんな風にマスコットが増えれば、自然と注目される訳で……母や義姉、姪にメイドともふもふしたい志願者が増えたことは付け加えておく。
チミ達モテモテだねぇ。
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