第22話 家とは持ち運ぶもの
快適な旅とは?
その問いの答えは極めて難しい。
だが、旅先だろうと衣食住が満たされていれば、それはきっと多くの人が快適と言うだろう。
テントでの寝泊まりも旅の醍醐味。
宿があれば、宿を利用すればいいが、無ければテントが役に立つ。
この世界なら、テントよりも貴族だとある程度寝泊まりも出来る馬車がありそれを利用するが、睡眠に大いなる期待を寄せる俺としてはやはり少し物足りないと言わざる得ないだろう。
なので、作ることにしました。
何をって?
持ち運べる家ですよ! (ドヤァ)
……分かってます、ドヤ顔が似合うのは姉様や兄様みたいな美形だということはとうに分かってますよ。
でも、まだまだ子供な俺も可愛い盛りのはず。
小憎たらしかったら、ごめんなさい。
さて、まず持ち運べる家とは何かと言えば、簡単に説明すると魔法で作った家を魔法で持ち運んでテント感覚で使うことを想定して作った家の事。
家が持ち運べないなんて、小さな子供でも知ってることだ。
だが、魔法というのは、常識を覆すないし、クラッシュするのだ。
まず、新しく作った『建築』の魔法で、家を作る。
7属性全ての何れかの技を組み合わせて編み出したこの魔法は強力で、例えドラゴンの炎でも焼けることはなく、古龍の属性攻撃でも傷一つつかない。
強度は俺の住んでる王城よりも頑強で、防音対策もバッチリ。
外で魔物が攻撃しても室内には音は一切響かず、また、室内でどれだけ騒いでも外に音は漏れない。
音が聞こえないのは危ないと思うかもしれないが、この世界最強であるドラゴンですら壊せない上に、俺にはとっておきのボディーガードがいるので、その心配は不要だろう。
万が一には俺が察知できるし。
伊達に、英雄なんて面倒な仕事してたわけじゃないのだ!
……泣いてないよ?
ちょっと目にゴミが入っただけだよ?
さて、気になる内装は、和洋を組み合わせた2階階建ての一軒家で、旅先にある程度のスペースがあれば使える優れものだ。
さ・ら・に……なんと、シャワーや冷蔵庫が自由に使えるのです!
高価な大型の火と水の魔石、氷の魔石とそれぞれ付けられており、俺が魔力を充電すれば使える優れもの。
高価な大きい魔石は魔力の内蔵量も多く、1回の充電で軽く一月は使える代物だ。
まあ、その分充電する魔法使いの魔力の消費は大きめだが、俺の魔力量なら微々たるものだ。
これにより、冷蔵庫、洗濯機、シャワー、キッチン、水道にトイレなども使えるのだ。
電化製品……もとい、魔道具である冷蔵庫や洗濯機は俺のお手製だが、日本の最新の品に負けず劣らず (俺のかつての前世視点) の性能はあるはず。
洗濯機に関しては、乾燥機機能もあるが、室内干しをしても匂いは気にならないようになってる。
旅先で、シャワーを浴びて、お風呂に浸かって、風呂上がりに冷えたジュースを飲んで、温かい布団で寝る……これ本当に旅行?
そんなレベルになってしまったが、フィリアとそのうち旅行した時に近くに宿が無かったら2人でゆったり過ごすものいいだろう。
さて、そんなマイホームを俺は手に入れ――もとい、作り出してしまったが、何バージョンかをせっせと用意して空間魔法で別空間に保存しておく。
空間魔法の規模なら何百、何千と入れても理論的には大丈夫だが、そこまで作るのは面倒なので止めておく。
ただ、敷地によって大きさを変えたり、室内のインテリアを変えたりと楽しんでみた結果、実に42軒の我が家が出来たのだった。
魔法で作ってるので、かかる費用は魔石と冷蔵庫の中の食料くらいなものだが、魔力の消費はきっと、普通の魔法使いの何十倍だろうなぁと客観的に見たら偉いことになったので、きっとこの世界でこの魔法を使えるのは俺くらいだろうとしみじみ思う。
空間魔法に入れれば、当然ながら、室内にある冷蔵庫の時間も止まる。
だから、ある程度魔法で冷やしたものを入れてるが、腐らないのが空間魔法の1番の利点かもしれない。
さて、移動法についてだが、ここまでの説明で、きっと分かってる人も多いだろうが、空間魔法に収納してそれを持ち運ぶという感じになる。
問題は設置だ。
家はただ建ってる訳じゃない。
だからこそ、もう1つの新魔法、『移築』を使ってその場に固定する。
この『移築』の魔法の凄いところは、地形などを考慮しなくても魔法の力で強引に固定してしまう点だろう。
これにより、俺はテントや馬車で寝泊まりをせずとも、ゆったりと旅先で休むことが可能になったのだ。
まあ、宿とかテントとかも好きだから、気分によっては使わないけど、久しぶりに大規模な魔法を使って少し充実感があったのは収穫だろう。
それで、突然こんなことをした理由は、もちろん……ただの思いつきです!
うん、いいねぇ。
こういう無駄な時間の使い方。
有意義だねぇ。
まあ、そのうち転移先を増やすために遠出するかもだし、作っておいて損はない。
そんな訳で、お家を持ち運べるようになりました。
うん、いい仕事したね、俺。
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