第18話 8歳になりまして

のどかな朝、早起きをして二度寝をしても、寝坊はしないので、存分に堪能できる。


この浅い眠りが心地よくて、いつまでも浸っていたく――


ぺちぺち


「おじちゃま、おきて!」


うん、ゆったりとこの微睡みに浸って――


ぺちぺち、ぺちぺち


「おじちゃまー!おっきしてー!」


俺の憩いの時間が……


いや、まだ俺は布団で寝てるのだ。


ならば、定番のあの台詞を!


「あと5分……」

「むぅー!とうっ!」

「ごふっ!」


お腹の上に何かが馬乗りになる。


そしてぺちぺちと「おきてー!」と催促をしてくる。


仕方なく目を開けると、そこには、レグルス兄様の子供で、俺の姪にあたる、ティファニーがお腹の上に乗っていた。


俺は現在8歳になった。


8歳の叔父と2歳と少しの姪。


違和感もあるだろうが、この世界は結婚が早いのでこういうこともあるのだ。


姪のティファニーの最近のお気に入りは、寝てる俺を起こすことらしい。


別に寝坊とかしてないし、むしろ、早寝早起きをしてる、健全な子供なのだが……ティファニー的にはそんなのは関係ないらしい。


俺が目を開けると、ティファニーは満面の笑みで言った。


「おじちゃま、おはよう!」

「……おはよう、ティー。ありがとね」

「どういたしまちて!」

「とりあえず、起きるから下りてもらえないかな?」

「だめー!そうしたら、おじちゃま、ねんねしちゃうもん!」


信用がない。


まあ、時間的にもう少しゆっくりするつもりだったけどさ……


「………」


ふと、視線を横に感じて視線を向けると、そこにはティファニーの双子の姉のスワロが無言で俺を眺めていた。


「おはよう、スワロ」

「……うん」


活発な妹とは対象的で、静かな姉だが、この歳でなかなかお利口さんなので、流石レグルス兄様の子供というところだろうか?


「……おじさん」

「ん?何かな?」

「……えほん」

「ああ、もう少しで出来るから、出来たら渡すね」

「……ありがとう」


ちなみに、スワロは俺の作ったにゃん太とワン次郎の絵本がお気に入りで、新作を楽しみにしてるらしい。


少し気恥しいが、喜んでくれてるならいいかな?


俺に馬乗りしている、ティファニーを下ろしてから、手早く着替えを済ませる。


鏡の前で身だしなみをチェックする時に思うのは、前世の二回を含めるとこの年齢での身長の伸びは最下位かもしれない。


睡眠時間が短かった前世の方は、何故か身長がそこそこ高めだったが……今世はどうなるのだろうか?


寝てる方が重力に逆らってないから、身長伸びるって聞いた事あるけど……まあ、普通であれば文句はない。


準備を終えると、3人で部屋を出てダイニングルームに向かうが、向かう先は兄夫婦の住う別棟のダイニングルームだ。


本来、既に家庭を持ってる兄様達と俺は城の中の別棟にて別居をしてそれぞれ生活しているのだが、こうしてたまに姪たちの要望で一緒にご飯を食べることがあるのだ。


まあ、ぼっち飯の時間が減るから嬉しいけど。


8歳なっても、父様や母様の忙しさはあまり変わらない。


王位を直にラウル兄様に継承させれば多少落ち着く……なんてこともなく、むしろ、そこからは夫婦の時間という感じで予定を立ててるらしい。


なるほど、俺も老後はフィリアと仲睦まじい隠居ライフをエンジョイしたいものだ。


まあ、近いうちに前国王になる父様と前王妃になる母様は隠居後もそれなりに色々と仕事もあるのだろうが、俺はフィリアとの間に出来た我が子に全て託すとしよう。


フィリアとの子供かぁ……きっと、凄く可愛いだろうなぁ。


絶対、今度こそ子供に『パパ』、『お父さん』、『お父様』、『父上』などと呼ばれたいものだ。


そんなことを思って中庭を抜けていると、ふと素振りをしている小さな子供を見かけた。


素振りと言っても、玩具の軽くて安全な剣なのだが、真剣にやってるその子は汗が出るほどに熱心にやっていた。


「頑張ってるね、ドルード」

「あ、おじさん!」


俺が声をかけると、その子――ラウル兄様の長男であるドルードは、素振りを中断して駆け寄ってきた。


「おじさん、あとでけいこしようよ!」

「だめよ!おじちゃまはわたしたちとあそぶの!」


こくりと頷くスワロ。


モテる男は辛いものだ。


まあ、暇人なのが俺くらいな上に、年齢も比較的近い年上のお兄さん (関係性は叔父だけど) なので、いい暇つぶし相手なのだろう。


ラウル兄様の姿を見て憧れてる、ドルードは将来騎士になりたいそうだが……眩しいねぇ。


こんな子供のうちから夢があるとは。


俺の場合生き急ぎ過ぎて、スローライフを満喫したいしか考えてないのに、しっかりした子達だこと。


ラウル兄様の長男であるドルードは、もうじき王位をラウル兄様が継いだら第1王子ということに世間ではなる。


ラウル兄様の代の……という感じだけど、こういうのが王族貴族のややこしいところだよね。


王位継承権の低い第3王子で良かったと心底思う。


まあ、一部貴族が俺を祭り上げたがってたようだけど……王様なんて罰ゲームもいいところだ。


ゆったりと過ごして今世は平穏に……うん、それがいい。


そうして、子供たちに囲まれつつ、朝食を取るが、兄の奥さん達皆美人ですごいよね。


俺はフィリアが1番だけどね。


















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