第17話 和食が恋しい
英雄時代の前世では、気にならなかった……いや、気にする暇も無かったが、生活にゆとりが出来て、贅沢になってきた俺はある物が恋しくなっていた。
「和食が食べたい……」
パンは勿論好きだが、たまにはご飯も食べたくなる。
贅沢言わないから、ご飯とたくあんだけ貰えないかな?
ご飯があれば、丼物も作れる。
親子丼、カツ丼、牛丼、すき焼き丼、うな丼……数えるとキリがないな。
野菜の煮物とか、醤油があるから出来る料理も。
味噌汁も恋しい……豚汁も食べたい。
思えば、最初の人生は辛すぎて食が細くなって日本食もあまり食べれなかった。
2度目の人生は、英雄となっても結局美味しいものを食べるゆとりはなく……うん、なんか泣けてきた。
そうなると、やっぱり懐かしい故郷の味 (別に帰りたいとは思わないけど) を思い出すのは仕方ないことなのかもしれない。
お米自体はどうやら、この世界にも存在するらしい。
とはいえ、まだ子供の俺が行ける距離ではない。
転移魔法は、行ったことのある場所にしか行けないので、見知らぬ地へいきなり転移は出来ない。
一日ごとに距離を決めて、転移を繰り返して行けば行けなくもないが……そこまでやる気になる訳でもない。
和食が恋しかろうと、他にやりたいことは沢山あるので、無理に行く気にはならないのだ。
商人に頼むのも難しいし、大きくなったら、行ってみることにするか。
そんな訳で、今日も1人でお食事です。
レシア姉様が嫁いでから、ぼっち飯が増えた。
王位を継ぐことになった、ラウル兄様やそれを補佐することになるレグルス兄様は前より忙しくて顔を見る時間も減った。
父様や母様も相変わらず忙しそうで、そうなると必然的にぼっち飯が確定するのだ。
……なるほど、俺がシスコンな理由がよく分かるよね。
必然的に、ぼっちの時間を減らしてくれてたのがレシア姉様だったんだものね。
フィリアと一緒に食べたいけど……俺が行くと気を使わせるし、それに、フィリアも勉強やお稽古事で忙しいみたいだ。
まあ、それはそのうち落ち着くらしいけど、今は頑張ってるフィリアの邪魔はしたくないので、気分転換に遊びに行くくらいがいいのだろう。
俺も本来なら、勉強やら色々とやる事があるのだが……伊達に2回も転生してないので、ある程度はこなせてしまう。
領地に関しても、今のところ問題はない。
魔法や剣術……技術や魔力はあるので、筋トレくらいしかやることない。
レッツマッソー!
……まあ、ラウル兄様みたいに筋肉にはなりたくないけどね。
うん、やべぇ。
皆、忙しい中で俺が1番暇なんだと痛感させられた。
だけど、別に焦りはない。
サボったり、何もしてない訳じゃなく、こうしてダラダラ過ごせるのは、女神様が救ってくれたからこその奇跡なのだ。
うん、やっぱりこの人生最高だよね。
なので、暇な時間は女神様に祈りを捧げる。
俺も信心深くなったものだ。
まあ、別に女神様以外を崇めることはしないけど。
広めるなと言われてるから、宗派を増やせないが、俺如きの力では女神様の素晴らしを広めるのは難しいので仕方ない。
……いや、本音を言おう。
何となく、他の人にこの事は話したくないのだ。
フィリアならいいけど、それはあくまで、フィリアだからだ。
大切な人で、秘密を守ってくれる――そんな素敵な人だからだろう。
ちなみにだが……最近になって気づいたが、多分俺はかなり独占欲が強いのかもしれない。
特に、フィリアと女神様に関しては。
女神様は不敬かもしれないが、フィリアに関しては大切すぎてそうなってしまうのだろう。
今までの反動だろうか……多分、大切なものが急に出来たからこそのことなのだろう。
そういえば、側室も早く決めないとダメだなぁ………気が重い。
フィリアは、どんな人でも仲良くすると笑顔で言ってくれたが、俺がちゃんと愛せるか自信が無い。
1人にこれだけ執着するのに、他の人も愛せるのだろうか?
……非常に謎が謎を呼ぶ。
まあ、もうしばらくは、こんな風にダラダラする日々も過ごせるだろうと、俺はゆったりとした時間をエンジョイするのだった。
平和バンザイ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます