第13話 婚約

泣き止んだフィリアと、俺は近くに腰掛けて色々と話した。


フィリアは凄く素直な女の子で、嘘やお世辞など言わずに常に本心で話す。


それが分かるのは多分、神様の加護の力だろうが、今はそれがとてつもなく心地いい。


笑顔も可愛くて、何度も胸が高鳴ってしまう。


そっか、好きな人と話すってこんなに楽しいことなのか。


神様への気持ちは敬愛とかも含んでるから、今の気持ちとは少し違うのだろう。


でも、それらを差し引いても俺はフィリアに惹かれていた。


フィリアの話を聞くと、どうやら両親はかなりまともなようで、フィリアのことを真っ直ぐに愛しているのだろうということが分かった。


だからこそ、こんなに純粋に育ったのだろう。


「殿下!こんな所に居たんですか!」


そうして、しばらく話していると、中々戻らない俺を心配したのか、メイドのエリアが迎えに来た。


名残惜しいが、そろそろ戻らないと不味いか。


フィリアも残念そうにしてるようで、それは少し嬉しかった。


……うん、やっぱり言おう。


本当はもう少しお互いを知ってからの方がいいのだろうが……聞くだけ聞いてダメだったら仕方ない。


やらずに後悔するより、やって後悔しよう。


「フィリアはさ……婚約者とか、好きな人っている?」

「え? えっと……い、いません……けど……」

「そっか、なら……」


俺はフィリアの前で片膝をつくと、そっと手を優しく取って微笑んで言った。


「フィリア嬢、私と婚約して頂けませんか?」

「……ふぇ?」


驚いて目を見開くフィリア。


オレンジと青のオッドアイが綺麗に輝いているが、そんな綺麗な瞳を見つめて俺はバクバクの心臓を抑えつけて爽やかな笑みを頑張って本心を伝えていた。


「出会ったばかりで急かもしれないけど……一目惚れしたんだ。フィリアと一緒にこの先の人生を歩みたいと思ったんだ。だから……もし、フィリアが嫌じゃなければ、俺と一緒に生きてくれないかな?」


突然のことにフィリアは大層困惑してる事だろうと思ったが、フィリアはまたしても瞳に涙を浮かべていた。


嫌なのだろうか……そう思ったが、その答えは違っていた。


「いいのですか……?こんな私で……私が、殿下のお側にいても……いいんですか……?」

「側に居て欲しい」


そう答えると、「はい」と静かにフィリアは頷いた。


この瞬間、俺とフィリアの婚約が決まった。


見届けることになった、エリアには申し訳ない気持ちになったが、黙って俺たちのやり取り見ていてくれたのは嬉しかった。




「戻ってきたか……って、シリウス?」


父様が俺と手を繋ぐフィリアを見て驚いたような表情を浮かべていた。


フィリアは、何か言われるのではと緊張していたようだが、俺は特に心配して無かった。


案の定、父様は笑いながら言った。


「なんだ、抜け出したかと思ったら、ご令嬢を持ち帰ってきたのか」

「父様、私の婚約者になったフィリアです」

「フィ、フィリア・アスタルテです……」

「アスタルテ伯爵家のご令嬢か。お、噂をすれば本人だな」


そちらを向くと、俺のいきなりの婚約者発言に驚くギャラリーから、フィリアの父親と母親が割って出てきた。


2人はフィリアのような髪色も瞳もしてないので、祖父母とかの遺伝なのだろうか?


「フィリア、これは一体……」

「あの、お父様。実は……」

「失礼、アスタルテ伯爵。先程、私が彼女……フィリアに婚約を申し出まして、それを受けて頂きました。正式な婚約は後日になると思いますが……どうか認めて頂きたく」


確認の視線をフィリアに向けるフィリアの父親。


それを受けて、フィリアの母親は大層嬉しそうだったが、父親の方は少し心配そうだった。


まあ、可愛い娘だし仕方ないよね。


「殿下、本当に娘でよろしいのでしょうか?」

「ええ、恥ずかしながら、一目惚れしまして……話してて、更に好感が持てて、フィリアとなら上手くやっていけると確信しました」


その言葉にアスタルテ伯爵は困惑し、フィリアは嬉しそうにしていた。


うん、可愛いな。


「という訳です、父様――いえ、国王陛下、この婚約お許し頂けますか?」

「許可しよう」

「よろしいのですか、陛下?」

「ああ、アスタルテ伯爵の人となりは存じてる。その娘なら安心して息子を任せられる……フィリア嬢。息子のことを頼めるだろうか?」


その父様からの言葉にこくりとフィリアは頷いて答えた。


「はい……ずっと、殿下と共にいると誓います」

「だそうだ、アスタルテ伯爵」

「……分かりました。殿下、娘をよろしくお願いいたします」


その言葉で、俺とフィリアの婚約が両家の間で決まった。


書面とかは後日だろうけど、これで俺とフィリアは婚約者だ。


いやぁ……少しホッとした。


王族からの婚約とか断れないから無理強いした感じかと後々思ったが、フィリアも嫌では無さそうで良かった。


ギャラリーの中には複雑そうな連中もいるようだが、俺とフィリアの婚約はこれで貴族中に広まった。


フィリアに余計なちょっかいかける奴もこれで減るだろう。


にしても、隣で微笑むフィリアが天使すぎてヤバいんだけどどうしよう?












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る