第4話 フライドポテト

「フライドポテトが食べたい」


不意にそんな気分になった。


最後に食べたのは、確か最初の人生の時に賄いで作らされた以来か。


お店のは俺が出歩けないのを不憫に思ってか、同僚がお土産で買ってきてくれたが、こうして落ち着いて食事にも気を使えるようにると食べたくなる。


そんな訳で、俺は厨房に向かった。


あまり仕事の邪魔をしたくはないが、こういうのは食べたい時に作らないと。


そう!そういう贅沢が出来る人生なのです!


厨房に着くと、仕込みをしてる料理人達がおり、俺の姿を確認すると驚いていた。


そんな中で、料理長であるゼフスは笑顔で話しかけてきた。


「これはこれは、シリウス様ではありませんか。お食事が足りませんでしたか?」


ラウル兄様が、たまにこうして強請りにきたらしく、そんな感じかと聞いてきたゼフスに俺は首を横に振ると聞いた。


「実は、少し厨房借りたいんだけど……邪魔にならないようにするから端の方貸して貰えないかな?」

「もしかして、シリウス様がお料理を?」

「うん、少し作りたいものがあって」

「では、私がお供しましょう。材料は何が必要ですかな?」


王族の子供を1人で調理場に立たせるのは不味いという判断だろうが、かえって気を使わせてしまったようで申し訳ないな。


まあ、でも、そうか。


王族なんだし、ゼフスにレシピ教えて作って貰うのもありだな。


でも、こういうのは自分でやるから楽しいんだよなぁ……うん、その辺は臨機応変に。


「ジャガイモある?」

「ええ、ありますよ」

「なら、早速作ろうか」


ジャガイモの皮を剥くのは、少し大変だけど、最初の人生での調理補助と調理経験でコツは掴んでるのでサクッと皮剥きを済ませる。


その様子にゼフスは大層驚いていたけど、ゼフスの方が圧倒的に早いのでプロの凄さを思い知った。


そうして、今回作るのは厚切りのポテトなので、ジャガイモを大体6等分くらいにして、食べやすくしておく。


それから、一時間ほど水で晒してから小麦粉をつけて油で揚げる。


流石に油で挙げるのは、危なすぎるとゼフスに役目を取られたが、ゼフスの方が上手く揚げられるだろうし任せることにした。


そうして、挙げたフライドポテトに塩をかければ……はい、完成!


ケチャップは……作り忘れたので、今度作ろう。


「ありがとうね、ゼフス」

「いえ……あの、シリウス様。 このような料理どこで覚えたのですか?」

「ん? まあ、ジャガイモ揚げたら美味しいかなって思ってね 。ゼフスも味見どう?」

「では、いただきます」


上手いこと話を逸らして、ポテトに手をつけるゼフス。


流石に異世界からの知識とは言えないしね。


俺も食べるが、熱々のポテトに絶妙なバランスの塩……うん、肥えるわぁ……


でも、食べたくなる。


2つ目を口に含むと、また欲しくなる。


「美味しいですね……」


見れば、ゼフスも2つ目を手に取りそうになって慌てて引っ込めていた。


「食べてもいいよ?」

「いえ、これはシリウス様のものですから」

「そっか、ありがとね」

「あの……こちら、陛下や王妃様のお食事にも出して宜しいでしょうか? 勿論、レシピは口外しないので」

「いいよ。ただ、あんまり食べ過ぎないように気をつけてね」


1度食べると止まらなくなるのが、ポテチとポテトの恐ろしいところ。


ジャガイモという野菜が、油に晒されてその分がお肉となる……恐ろしいものだ。


でも、美味しいから食べてしまう。


これで、この世界にないコーラとかの炭酸飲料とか生み出したら……なお、最強なコンボになるな。


前世では、太るどうこうの前に、心労であまり食が進まなかったのだが、今世はかなり余裕がある分、太ることも有り得そうで怖い。


まあ、運動はしてるけど、こうして太るもの生み出し続けたら……危ういな。


今度はポテチ作ってみるか。


そうして、その日の夕飯にはフライドポテトが出されたが、流石にプロは凄くて、細切りのも普通に出されていたのには驚いた。


フライドポテトは家族にかなり好評だったらしく、後日家族に会った時に褒められて嬉しかった。


思えば、最初の人生の時は賄い作るのは仕事だったし、2番目の人生の時は誰かに振る舞うことは無かったから、こうして作ったものが評価されるのは嬉しいな。











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