第2話 第3王子

スレインド王国のとある一室。


自室となったそこで俺、スレインド王国の第3王子のシリウス・スレインドは目を覚ます。


時刻は朝の8時頃。


ふかふかのベッドから下りると、着替えて鏡の前で身だしなみの確認をする。


薄めのブラウンのサラサラとした髪が特徴的な童顔の女顔が、今世の俺の姿だ。


まあ、年齢的にまだ4歳ということで、童顔で女顔でも有り得ないことではない。


……ただ、母や姉がやたらと女装を勧めてくるのは解せないけど。


そんなことを思っていると、コンコンとノックの音が聞こえてくる。


「失礼します、シリウス様……もう、お目覚めでしたか」


入ってきたのは俺のお世話をするメイドさんであるエリア。


スラリと背の高い灰色の髪が綺麗な女性で、確か今年で20歳になるという。


俺の準備が終わってるのを見ると感心したような表情で微笑んでいた。


「おはよう、エリア。今日の朝食は誰か居るのかな?」


国王である父と王妃である母は多忙なので、一緒に食事を出来る機会が少ない。


2人の兄も父の仕事の手伝いがあるし、2人いる姉は上の姉は嫁いでおり、下の方の姉も学園に通ってるので色々と忙しいのだ。


「今日は、レシア様がいらっしゃいます」

「そっか、ありがとう」


レシアというのが、学園に通ってる下の姉。


現在14歳と、俺とは10歳差があるのだが、一番歳が近いのがこの姉だ。


兄は双子なので、現在2人とも18歳で、結婚もしている。


子供はまだだそうだが、そのうち俺も叔父になるのだろう。


この世界での成人は15歳。


上の姉は現在16歳で、国外へと嫁いで居ないのだ。


まあ、それだけ歳が離れてるのも、本来生まれないはずの第3王子ということなのだろうが、兄や姉が綺麗な金髪なのに対して俺だけブラウン系の髪色なので、不自然感が無くもないが、母親が綺麗な栗色の髪なのでセーフだろう。


そんなことを思いながら、エリアと共にダイニングへと向かうと、テーブルには既に我が姉であるレシアが座っていた。


「シリウスおはよう」

「おはようございます、レシア姉様。今日は生徒会の方は宜しいのですか?」

「ええ、久しぶりにシリウスと一緒に朝食とりたくて丸投げしてきたわ」


異世界で生徒会というのもなんとも不思議だが、学園というものには必要なのだろう。


レシア姉様は、嬉しそうに俺に笑みを向けてくるが、歳の離れた弟である俺が可愛いのだろう。


というか、基本的に俺は家族仲はかなり良好だと思う。


兄達は俺が王位継承権に絡めないし、絡むつもりが微塵もないというのを分かってるから、普通に弟として可愛いがってくれてるし、姉達も優しい。


父と母は仕事が忙しくてあまり会う時間はないが、末っ子なりに気を使ってはくれてるのだろう。


なんというか、この時点で前とその前の人生より優しい世界で幸せだ。


最初の人生は親はロクでなしで、顔すら覚えてないし、二度目の人生は早くに家族と死に別れたので、こういう普通な感じが堪らなく嬉しい。


俺には少し高い椅子に座ると、早速メイドさん達が朝食を運んでくれる。


まあ、俺もレシア姉様もあまり食べないから、パンとサラダくらいだけどね。


「シリウスは今日は何する予定なの?」

「今日から剣術も学ぶので、それまではのんびりしてます」

「そう、怪我しないように頑張ってね」

「ありがとうございます、姉様」


のんびり出来るという素晴らしい世界。


今朝だって睡眠が8時間も取れて、それだけで幸せなのに、今日の予定も剣術以外の稽古が無いのが素晴らしい。


まあ、まだ4歳だし、無茶は出来ないけど、剣を握るのは嫌いじゃないのでいい。


本当は魔法とかも10歳くらいにならないと教わらないのだが、俺の場合は既に全属性実践も生活も問題ないレベルで使えるのであまり意味はない。


とはいえ、家族にはそれは知られてない。


ただ、魔法が使えることは知られてると思う。


前に、レシア姉様が本を読んでくれた時に、紙で指を切ってしまって俺が治癒魔法を使って治したことがあったからだ。


レシア姉様には驚かれたが、同時に物凄く褒められた。


魔法使って褒められたのは初めてなので少し恥ずかしいけど嬉しかった。


そんな訳で、俺が最低でも治癒魔法を使えることはバレてるので、これは仕方ない。


ちなみに魔法には7つの属性があって、火、水、風、土、光、闇、無属性と分かれており、治癒魔法は光の属性に分類される。


最初の4属性は比較的、複数の特性持ちも居るのだが、後半の3つはかなりレアなので、父や兄はかなり驚いていた。


本当は全部使えるが……それは知られない方がいいだろう。


魔法使いという時点で、実はかなり貴重なのだが、それ以上知られると色々面倒事も増える。


幸いなことに、俺ののんびりした生活の様子から王位などに興味が無いのは知られてるので、父や兄も特に気にしてないようだ。


英雄でさえ面倒だったのに、王様なんて嫌すぎる。


せいぜい、俺はほどほどに出来る仕事を見つけて、今度こそ普通に結婚して幸せな家庭を築くのだ。










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