第21話 異世界

倉庫の穴を通り、元の世界に帰ってきた。無事に帰ってこれたのは良かったけど、先ほどからエムが静かで、それが気になっていた。


「どうした? やけに静かだけど」


「………………」


「大丈夫?」


「……………………」


「ぅん?」


しばらく歩いていると、エムが僕を見つめ、


「もう、アイツとは関わらない方が良いよ。凄く嫌な予感がする」


「ごめん。取引もしたし……」


「どこまでお人好しなんだよっ!! 嘘に決まってるじゃん。なんで分からないんだよ。アンタを利用するだけ利用して、最後は躊躇わず殺すよ。絶対」


目に涙をいっぱいため、僕を心配してくれる。


「ありがとう。でも……。僕は、あの男を信じるよ。今は、その賭けに乗るしかない」


「じゃあ、一人で勝手にやれ」


エムはそれ以上何も言わなかった。

小さくなる背中に声をかけたい気持ちはあった。でも、結局何も言えなかった。


有益な情報を得る為。そして、いつかあの男に挑戦する時の為にも。今の環境では無理。だから僕は、古巣に戻る覚悟を決めた。



ライブハウス【覇者】



閉店後、深夜二時五分。その時間だけ、勝手に入口が開く。僕は、外よりも暗い店内に入った。


フロントのような場所に背の低い中年男が、巨乳の女に抱っこされていた。


「ほぅ~~。珍しい客が来たもんだ。今更、何しに来た? ここは、お前のような堅気がくるような場所じゃないよ。帰んな、帰んな」


「もう一度、登録したいんだ」


「冗談キッツ~!!」



ゴキッ!


僕は、男を抱っこしていた女の首をへし折った。


「早くしてほしい。僕には、時間がないんだ」


中年男は死んだ女の腹の上に乗り、波乗りをするように手足を動かし、しばらく遊んでいた。


「………分かった。登録しよう。ランキングは、前と同じ一位で良いよな。あのさ、ところでどうして俺の女を殺すんだよ。オッパイ返せよな~、バカちんが」


「その人が、机の下からベレッタで僕の股間を狙っていたから。だから、殺られる前に殺った。まぁどうせ、あんたの命令だろうけどさ」


「あっヒャヒャヒャヒャッ!!!! 二年ぶりに俺達のキングが、帰ってきた。帰ってきたぞぉ!! 今夜は、最高の夜だァーーーーーーーーーーーーーーー!!!! ヒィャヒャヒャヒャ、久しぶりに血の雨が見れる」



僕は、その夜『殺し屋』に戻った。

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殺し屋しかいない世界 カラスヤマ @3004082

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