初めての村訪問
あれから数日。
先ずはフェニー以外の精霊とも契約を結ぼう、と初日に行った泉であのとき現れた残りの精霊とも順調に契約する事が出来た。
水のマリン、風のシルフィーネに地のグラン。それぞれ名を与え、受けて貰った。
なので今現在、火・水・風・地の加護を得ている。既にチート臭がするね。ありがたいけどさ。
みんな友好的なんだけど、家まで付いてくるのは今のところ、相変わらずフェニーだけだ。他の精霊達は何かあれば呼んでくれ、と消えてしまっている。
そんな中、フェニーが少しずつ精霊について教えてくれている。この世界にはフェニーら4つの属性以外に「光」と「闇」がある事、この二つもそのうち会いにくるだろうからその時契約すればいい、とか。
後、この森の中はそんなに強い魔物はいないので安心して散策出来るとか、森を出て少し歩いた所に村があるとか。余所者にも寛容な村だから心配しなくていい、とか。
オカンか。
言葉遣いはちょっと古めかしいというか、アレだけど、とても面倒見のいい精霊なのかな、フェニーは。
そんなフェニーの言葉に村にも行ってみたい、と言えば小鳥姿のフェニーをお供に早速村へ向かう事になった。
村へ続く道を教えてもらいテクテク半刻も歩くと村が見えてきた。するとフェニーが肩から地面に降り立つ。
その瞬間フェニーの姿が消えて燃えるような赤い色の髪と瞳を持つ少年が現れた。
「えっ!」
びっくりしてフェニーを凝視してしまう。
「あの姿のままだと不便なのでな。こうして人型になる事も出来る。今日はこの姿の方が便利だろうて。」
何を驚いている、残りの面々も出来るぞ、とサラリと言われた。
「さて。村を案内してやろう。」
その言葉とともに有無を言わさずぐいぐいと手を引っ張られ、村へ足を踏み入れると初めに目に飛び込んで来たのは村に沿うように広がる畑だった。
「おや。坊主、久しぶりじゃないか。」
村に入って直ぐに声を掛けられる。
「今日はおねーちゃんに村の案内するんだ。」
フェニーは後でねー、と人の良さそうなおじさんに手を振って先に進む。
「フェニーって、普通に話せるんだ!」
思わず言ってしまう。
「必要であれば。処世術?というヤツだ。」
フェニーに手を引かれ村の中心へと向かう。道すがら目につく村人は。私の様な見た目もあればモフモフの耳があったり皮膚の一部に鱗が見えたり。
「ねぇ、この村って?」
と尋ねるとここは人族が治める村で、近くにさらに大きい獣人の治める村や他の種族治める村があるらしい。
ここはあまり大きな村ではないが旅人達にとって休息にいい場所との事もあり様々な種族の交流が盛んだそうだ。
だから色々な物も集まるらしく。連れてこられたのは食料品店だった。
「此処は色々集まっている店。珍しい物もある。」
とその店先にあったのは、真っ赤に熟れたトマトっぽい野菜だった。
その他にもよくよく見れば見慣れた野菜や果物が並んでいる。
嬉しくなって何種類か購入する。
「お嬢さんはじめてみる顔だねぇ。この村は初めてかい?」
手際良く野菜を紙袋に詰めながらこちらをチラリとみる。
「えぇ、最近近くの森に移住してきまして…」
当たり障りのない返事をしておく。移住とはちょっと違うけど。
「何処からだい?人族で黒髪黒目はあんまり見ないねぇ。」
「お姉さんは遠い東の国から来たんだよ。」
フェニーが横から紙袋を受け取り銅貨を何枚か渡す。
「そうかい、東の国ねぇ。そうだ、これ持っていきな。」
そう言ってポン、と手渡してくれた小さめの袋。東の国出身なら分かるだろ?ってね。
また買いにおいでよ、と送り出してくれた。
何をおまけしてくれたのか中を見ると熟れて黄色く色付いた梅っぽい実だった。
フェニーも覗き込んでこれは東の国から伝わった樹木で食べるよりは花を楽しむと教えてくれた。
そうか、これが梅なら熟す前の実が手に入れは梅干しや梅酒が作れるかも?なんて考えたけど。先ずはこれはこれで使いましょ。
他にも何件かお店を覗いて帰路に着いた。荷物は例のバッグに入れて仕舞えば邪魔にならないし。フェニーも村から少し離れると小鳥の姿に戻り肩の定位置に。
「あれ。その姿に戻っちゃうの?」
と聞けば。
『こちらで人型は疲れる。我はこの姿でも不自由ない。』
と返ってきた。喋り方も戻るんですね、なる程。さて、家に戻ったら今日購入した物をじっくり鑑定しますか!
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