神様って何処にいるのかな⁉
そんないたたまれない想いで日々を過ごす中、何をやっても効果が出ないことに苛立ちを覚えた。
とうとうお賽銭の返還を、神様に求めるようにまでなっていたんだ。
『神様ぁ⁉ 無慈悲に私を突き離すのも、いい加減にして欲しい。
せめて、
八つ当たりもできない。苛立ちを払拭できない。
むしゃくしゃする気持ちを抱えたまま、日課となっていた神社巡りを敢行していた。
いい加減に止めればよかったのだけど、止められなかった。
このまま通い続ければ次こそは憐れんで願いを叶えてくれるかも。
空から札束の雨あられが降るかも。
そんなありもしない妄想に
もうね、唐草模様のお財布には心躍るお札の姿が見えず、黄金色に眩しく輝くけど全然嬉しくない硬貨が僅かしかなかった。
笑えるよね。ご縁があるかもしれないけど。
とある神社へ
本殿に向かって必死に手を合わせる中、ぶつくさと愚痴を呟いていた。
『もうお金は、ありませんよ……ねぇ、神様って、けっこう理不尽過ぎるよね。
散々に参拝させておいて、お金を幾らお賽銭につぎ込んだと思っているの?
お賽銭をせしめるのがやり口なのかな⁉
もう神様でも何でも攻めないことには、ヤッてられない状況までこっちは追い込まれているんだよ‼』
遂に抑え込んでいた蟠りが爆発する。
何を血迷ったのか、目に留まった神様の使いである
そして、その胸の内に仕舞い込んでいる切実なる思いを我武者羅に叫んでいた。
『マジで、彼氏が、欲しいんですよぉ‼ ダメならお金返してぇ‼』
虚しかったな。
通りすがる人達に白い目で見られても罰当たりな行為と分かってもいたけど、無意味にずっと叫んでいたんだ。
挙句の果てに憤慨する神主さんに引きずり降ろされて、散々に説教をされる羽目にもなった。
不様だったけど、泣きながら微笑んで
『沢山のお金を神様に貢ぎました。同情するなら金をくれ……ううん、男の子を紹介してください』
と説教する神主さんを無下にして、嘆願までしていたんだ。
険しい顔をする神主さんは嘆願に気を留めるどころか、威勢を増す始末。
ましてやお約束の言葉までプレゼントするんだ。
『見たところ貴方は小学生か中学生ですよね。焦らずにジッと待っていればいつか必ず、ご縁がありますよ』ってね。
私は返す刀で『いつかって、いつだ!
切羽詰まっている高校生の私は、今すぐに彼氏が欲しいんだ‼
願いを叶えてくれない神様は、神様じゃない‼
見た目判断するな‼
もう、五円すらないんだよぉ。
お賽銭、カムバックゥ‼』
と泣きながら逆切れを散々かました挙句、
気持ちは幾分かスッキリしたけど、その後が大変だったね。
散々に罰当たりな行為をしたんだ、当然
その日の夜から高熱に
でもね、これは私にとって摩訶不思議な出会いの始まりとなったんだ。
あれは忘れもしない三日目の晩のこと。意識が
『ごめんなさい神様。お賽銭の返還は求めません……でも、彼氏は欲しいです』
と謝罪の言葉を呟き魘される中で不思議な夢を見たんだ。
鳥居を目の前にして呆然と立つ私は、様子を窺うように鳥居の中に目を向けると驚いたね。
鳥居が連続して立ち並ぶ姿は、赤い回廊みたいで神秘的な光景が長く
目を奪われる中、最初の一の鳥居の頂へふと視線を移すと【
どんなに記憶を辿っても聞き覚えがない名称に疑問は湧くけど、不思議と怖さは覚えなかったな。
誰かに呼ばれている――。
そんな気がして、吸い込まれるように一の鳥居をくぐり抜けていた。
トボトボと回廊の中をひたすらに歩いていた。
目ぼしい変化は特になく、感動も薄れて
本殿と言っても箪笥くらいの大きさで、至る所に
石畳を挟んで右側が
本殿の前に来ると、狛犬様に挟まれるように本殿に向かって一礼する。
何時の間にか手に握っていた札束を、お賽銭箱に無理やりにねじ込んで
『神様……ぼったくり、借金返済、貯蓄……ううん。どうか、チンチクリンな
すると突如として、地の底から湧き上がるような低い唸り声が聞こえてくる。
『うぬが切願しかと聞き届いた。
阿形を与える故に、吽形を探せ。
さすればうぬが願いはきっと叶うであろう。願い叶ったとき、われにもっと信仰の意を示せ。
それは吽形が指し示すであろう』
まだまだ
でも彼氏を授けてくれるなら凄く頑張るねと、添えおいた途端にパチクリと目が覚めていた。
まぁ、そこからが驚きの連続だったけど。
三日三晩、床に伏していたはず。
なのにまるで背中に羽が生えているように、体が軽くなっているではありませんか。
不思議な夢を見たこともすっかり忘れて布団からガバッと飛び起きると、お腹にグッと違和感を覚える。
これはいける。
意気揚々とスキップしながらお手洗いに行き、便座にスッと腰を下ろすと、ドンと豪快に出てお腹も心もスッキリ爽快になる。
もう有頂天になっていたね。
鼻歌まじりながらお風呂に入る時、脱衣所の鏡をふと見てハッと気が付いた。
私の頭の上に狛犬ちゃんがちょこんと乗っていることに――。
『ギャァァー‼ なんじゃこりゃぁぁ‼』とまぁ、ご近所さんが飛び起きるかってくらいに絶叫の雄叫びを上げて硬直していたんだ。
思わず狛犬ちゃんに触れてみると雲をつかむようなもの。
狛犬ちゃんを見詰めては幽霊なのか、妄想の
冷静に腕組みをして脳みそをフル回転して出した結論は、妖怪と判断したんだ。
そんな私を他所にして、脱衣所に飛び込んできたパパとママ。
血相を変えて大慌てしてくれるんだ。大声を張り上げて
そうこうしていると、『ウ~、ウ~、ウゥゥ』とパトカーがけたたましいサイレンを鳴らして家に近寄ってくるのが分かった。
それは後の祭り。
近隣の方々を叩き起こす大騒動に発展して、三人してペコペコと警察官とご近所さんに謝り通したのは記憶に新しいけどね……。
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