第13話 夕飯の団欒
「先に、着替えてくるよ」
「うん。その間に、夕食の用意をしておくね」
「頼む」
2階の自分の部屋にカバンを置いて、制服から部屋着に着替える。気楽に過ごせる格好になったら、階段を降りてダイニングに移動する。テーブルの上には、陽菜乃が美味しそうな料理がキレイに並べてくれていた。自分の席に座って、すぐ食べられるように待機する。
「どうぞ、召し上がれ」
「いただきます」
料理を並べ終えて、俺の目の前の席に陽菜乃が座った。両手を合わせて感謝の心を忘れないように、作ってくれたカレーを食べ始めた。
「うん、うまい!」
「良かった」
味の感想については、常に伝えるようにしている。嘘やお世辞は言わないように、感じたことを正直に。料理上手で、俺のことをよく知ってくれている陽菜乃が作ってくれているから、ハズレが無かった。毎回、美味しい料理を食べさせてくれる。
サラダやスープも用意してくれて、ちゃんと食事のバランスまで考えてくれているようだから、頭が上がらない。
「今日の放課後、ハルくんは街の方に遊びに行ったのよね」
「うん、そう。亜寿華とね」
夕食は、家族のような団欒の時間。その日あったことを話し合って、楽しく会話をする。今日は、陽菜乃と俺の2人だけだ。なので、いつものように彼女が聞き役で、俺の話を聞いてくれていた。
今日は、俺たち2人でウィンドウショッピングをしたことについて。どんなお店を見て回ったのか、話していく。便利そうな商品、陽菜乃が好きそうな商品、亜寿華がはしゃいで眺めていた商品などを喋った。
亜寿華が、陽菜乃のことを気にしていたことについても話した。
「そういえば、アレは亜寿華さんに伝えてくれた?」
「うん。送ってきてくれたメールを、彼女に見せたよ」
「どんな反応だった?」
「嬉しそうだったかな。あと、いつものように遠慮していた」
「そう」
「でも、陽菜乃の料理は食べたいって言ってたよ」
「そうなんだ。嬉しい」
そんな会話をしていると、ピンポーンと玄関のベルが鳴った音が聞こえた。俺は、スプーンを置いて席から立ち上がる。
「陽菜乃は、座ってて。俺が出るよ」
「うん。お願い」
立ち上がろうとしていた陽菜乃を制して、俺は玄関に向かう。宅配便か、彼女か。扉の鍵を開けると、部活帰りの千尋が立っていた。
「おかえり」
「ただいま! ご飯、出来てる?」
「陽菜乃が用意してくれてるよ。入って」
「うん」
まるで自分の家のように、慣れた様子で靴を脱ぎ捨てて家の中に入ってくる千尋。彼女には遠慮せずに過ごしてくれと言ってあったので、その通りに振る舞ってくれている。朝は、家のお風呂にも入っていたし自由だ。
ダイニングに移動すると、キッチンで千尋の分のお皿を用意する陽菜乃が見えた。彼女は、お玉でカレーを盛り付けてから振り返った。
「おかえり、ちーちゃん」
「うん! ただいま、ひなちゃん! 今日はカレーだね」
「すぐに食べるよね?」
「もちろん!」
「はい、どうぞ。お代わりは沢山あるから、いっぱい食べて」
「いただきまーす!」
千尋は席に座って、すぐに食べ始める。
制服姿だから跳ねないよう気をつけながら、上手にスプーンでカレーを食べていく千尋。陽菜乃はもちろんのこと、意外と千尋も食事している姿がキレイだった。気を抜いて、豪快に食べたりする時もあるけど。
「ハルくんも、お代わりは?」
「じゃあ、もらおうかな」
丁度良いタイミングだったので、ついでに二杯目のおかわりを盛り付けてもらう。まだまだ、食べれる。
今度は3人になって、楽しく時を過ごす。俺と千尋の2人が主に喋って、陽菜乃が合間にちょこっと意見を述べたりする。
美味しいカレーを食べながら、男1人と女2人で他愛もない話を続けた。
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