第12話 ハーレムの楽しさ
亜寿華と別れてから、電車に乗って家に帰ってきた。日も沈み、辺りは暗くなっている。一戸建てが立ち並ぶ住宅街を、1人で歩く。
そのまま先に進むと、自分の家が見えてくる。
家の1階に、明かりがついていた。誰か、先に帰ってきていることが見て分かる。鍵をさして、玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「おかりなさい、ハルくん」
家に入り、靴を脱いでいると中から陽菜乃が出迎えてくれた。白いシャツに、膝丈スカート。カジュアルな服装の上に、エプロンを身に着けた格好をしている。自分の家で高校の制服を着替えてから、ここに来てくれたのだろう。
奥から、美味しそうなカレーの匂いが漂ってきた。彼女は学校から帰ってくると、家でご飯を作って待っていてくれたようだ。
陽菜乃には、家の合鍵を渡してある。他に、紗紀子さんにも合鍵を渡してあった。いつでも家を出入りできるようになっていた。ちゃんと両親にも知らせてあるので、好きなように自由に。時々、家具を買って配置するぐらい好き勝手やっていた。家に居ないから、この家の持ち主である両親も好き勝手にすることを認めてくれている。
「ご飯にする? それともお風呂?」
新婚夫婦がよくやる、定番のセリフだな。たまにある陽菜乃によるちょっとした、おちゃめな行動。いつも通りの表情だけど、どうやら彼女の機嫌は良いようだ。このタイミングで、買ってきたプレゼントを渡してみるか。亜寿華にもプレゼントした、手に塗り込むとふわっとローズが香るらしいハンドクリームを。
「先に、夕飯にしようかな。それから、はい。プレゼント」
「わかった。……って、え?」
ダイニングに向かいながら、カバンから取り出したプレゼントを渡した。陽菜乃は珍しく目を大きく見開いて、驚いていた。これは、なかなかレアな表情だ。
「いつも世話になってるから、感謝の気持を込めてね。ありがとう、陽菜乃」
「私も、ありがとう。大切にするね」
嬉しそうに、受け取ったプレゼントを胸に抱いている。彼女がとても幸せそうで、俺も幸せな気持ちだった。嬉しいサプライズになったはずだ。
「もちろん、他の子の分も買ってあるのよね?」
「うん。亜寿華が欲しがってたから買ってあげたよ。全員分、買ってきた」
「それなら、良いわ」
陽菜乃も、亜寿華と同様に他の女の子たちを気にかけている。それが俺たちの普通だった。
亜寿華に陽菜乃も、プレゼントを渡すと素直に受け取り喜んでくれた。この後も、何人か親しくしている女性たちにプレゼントを渡す予定だ。彼女たちも喜んでくれるだろう。その反応を見ると、俺は充実感に満たされる。
彼女たちと過ごして、たくさんの幸せを感じることが出来ていた。
美味しい手料理を振る舞ってくれて、一緒に楽しく過ごしてくれて、俺のやりたいことをサポートしてくれて。
受け取るだけじゃない。幸せを与えていると感じると、俺も幸せを感じた。
普通の男じゃ経験出来ないだろう、充実感を毎日のように味わっている。だから、毎日がとても楽しかった。
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