第11話 ハーレムの大変さ
「ちょー、楽しかった!」
「満足できたか?」
「うん! 今日は付き合ってくれて、ありがとう」
夕方になり、そろそろ暗くなってくる頃。デパートのお店巡りを終えて、俺たちは駅に向かって歩いていた。これから亜寿華と俺は、逆方向の電車に乗って家に帰る。俺や陽菜乃、千尋とは違う学校に通っている亜寿華。互いに住んでいる家が遠くて、通っている学校も違った。彼女とは、待ち合わせをして会いに来る必要があった。
「もう、お別れかぁ」
「今度は、うちに遊びに来てくれ。陽菜乃が待ってるから」
「う、うん。ちょっと連絡してみるね」
彼女を家に招く。まだちょっと遠慮しているようだけれど、自分から連絡を取ってみると言っている。2人の仲が、良い方向に進展することを願った。
「そうだ、これ。プレゼント」
「え? これは?」
俺は、鞄の中からソレを取り出して亜寿華に渡した。突然の行動に、彼女は驚く。よく分からないまま受け取り、手元で凝視していた。
しばらくして、ソレが何か分かったようだ。
「うそ!? え? い、いつの間に?」
「欲しそうに眺めてただろ? タイミングがあったから、買っておいた」
それは、俺からのサプライズプレゼント。亜寿華がお店で物欲しそうに見ていた、ハンドクリームだった。隙を見て、買っておいた。
「うれしい! ありがとう、ハルト!」
「うわおっ!? っと。俺も、亜寿華が喜んでくれて嬉しいよ」
首に手を回して、亜寿華が抱きついてきた。彼女の身体を受け止める。通行人に、ガッツリ見られているけれど今は仕方ないか。
「でも良いの? これ、貰っても」
俺に抱きついたまま、彼女は尋ねてきた。プレゼントは嬉しいが、貰って良いのか気になったらしい。亜寿華の疑問に、俺は首を縦に振る。
「もちろん。亜寿華にプレゼントするため、買ったんだから」
「私だけ? 他の子には?」
「他の子たちの分も、ちゃんと買ってあるから。心配するな」
「良かった! なら、私も貰うね。本当に、ありがとう!」
彼女は、俺が他に親しくしている女の子たちに対して遠慮していたようだ。それでプレゼントを受け取っても良いのか、聞いてきたのだろう。
俺の周りにいる女性たちは、プレゼントを用意しなくても不平不満を口に出すことはなかった。他の子1人だけにプレゼントを渡したとしても、彼女たちは嫉妬したりしないようである。
それでも俺は、なるべく彼女たちを平等に扱うよう心がけていた。愛する気持ちを等しく振りまくように、日頃から注意している。
俺は、それを小学生の頃から続けてきた。今ではもう呼吸するのと同じぐらいには自然に、親しくなった女性たちを平等に愛してきた。
彼女たちのためではなく、自分が納得をするために。皆が仲良く出来るよう、良い関係を続けられるように。
問題なのは、このプレゼントを用意するためにはお金が必要だということ。親しくしている女性が多くなると、一人ひとりにプレゼントを用意するためには、かなりの資金が必要になってくる。
将来について考えてみると、もっとお金が必要になる。生活費はもちろんのこと、子供が生まれた時の養育費など。お金に関する問題を解決しておかないと、今の関係を続けていくのは難しそうだ。
だから俺は、周りにいる女性たちを養っていけるような仕事は無いかと、日頃から探していた。今のところ、そんな都合の良い仕事は見つかってない。それほど必死になって探している、というわけでもないから。
どうにか楽をして、皆で仲良く生きていく方法はないか。そんな風に、考えているぐらいかな。
どうしてもダメそうな場合は、両親の遺産を頼りにするつもりだった。もしくは、社長業で稼いでいる紗紀子さんに頼ろうかな。どうにかして、今の関係を続けていく方針で、俺は生きている。
やはり、自分ひとりの力だけでは今のような関係を維持していくのは難しそうだ。誰かに頼ることで、俺は生きている。だから、皆に感謝しないと。
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