第10話 女性たちの関係

「あれ、カワイイ!」

「どれ? お、ホントだな」


 学校の授業が終わって、放課後。亜寿華と合流して、デパートのお店を見て回る。陳列してある商品を眺めて、彼女と楽しく一緒になって笑う。商品を見てみた感想を言い合ったりして、買い物気分を満喫していた。


「そ、そういえば。陽菜乃ちゃんは、どうしてる?」

「陽菜乃? 家に帰って、夕飯の準備をしてくれてるかな」


 唐突に皐月陽菜乃について聞いてくる、亜寿華。なぜか少しだけ、緊張した様子。おそらく陽菜乃は、先に家に帰って夕飯の準備をしてくれているはずだが。


「そっかぁ。もしかして今日も、学校から一緒に帰る約束とかしてた?」

「してた。でも、亜寿華が遊びに誘ってくれたからな。こっちを優先した」

「あっちゃー。ごめんね、陽菜乃ちゃん」

 

 事実を伝えると、亜寿華は眉尻を下げ申し訳無さそうな表情を浮かべる。その後、明後日の方向を向いて何度も頭を下げると、陽菜乃に謝っていた。そっちの方角に、俺の家は無いと思うのだけど。


「せっかくなら、陽菜乃も連れてきたらよかったな」

「だ、ダメだよ! 陽菜乃ちゃんは、私のような女と遊んじゃ」


 なぜか亜寿華は、陽菜乃に対していつも遠慮していた。自分のような女が、彼女に関わっちゃダメだと思っているらしい。全然、そんな事は無いと思うんだけどなぁ。


「ほら、これ見てみ」

「え? なに?」


”了解しました。今日は、亜寿華さんに会いに行くんですね。

久しぶりに、ハルくんの家に来るように誘ってみて下さい。

私が手料理を振る舞いたいと、お伝え下さい”


 スマホに送られてきていたチャットの内容を、亜寿華にも見せる。これなら見せて大丈夫だろうという内容だったので画面をそのまま、彼女の目の前に掲げた。


「え! 陽菜乃ちゃん……!」


 画面に表示された文章を読んで、頬に両手を添えて感動している亜寿華。彼女は、陽菜乃のことが大好きだったから、逆に近寄りがたいと遠慮しているようである。


 俺の周りに居る女性たちは皆、ちゃんと知り合い同士で良好な関係を築いていた。陽菜乃と亜寿華。2人の関係は、ちょっと特殊だけど。


「な。だから、家に遊びに来いよ。陽菜乃も待ってるぞ」

「え、えぇ……。うーん、な、悩むなぁ。陽菜乃ちゃんの手料理……食べたい……」


 腕を組んで本気で悩んでいる。行きたいけど、行けないというような苦悩の表情。そんなに悩まなくても、気軽に来てくれたら良いんだけど。


「陽菜乃と、会いたくないのか?」

「もちろん、会いたいよ!」


 ものすごい勢いで、会いたいと答える亜寿華。


「なら、来たら良いよ。陽菜乃は、待ってるぞ」

「う、うん。じゃあ、近いうちに、い、行こうかなぁ」


 彼女はエヘヘと、だらしない笑みを浮かべる。陽菜乃に対して、デレデレだった。それなら、自分で連絡するように言ってみるか。


「家に来たら手料理を振る舞ってくれるらしいから、直接連絡してみたらどうだ? 事前に、食材の準備とかあるだろうし」

「え!? そ、それは。む、ムリムリムリムリ!」


 両手をブンブンと勢いよく振って、拒否する。連絡先は既に交換をしているから、2人だけで繋がることも出来るはずなのに。


「そんなに拒否るなよ」

「きょ、拒否ってないよ。ただ、私が彼女に連絡しても良いのかなぁ……って」

「別に嫌がってないだろ。むしろ、連絡してあげたら陽菜乃は喜ぶぞ」

「よ、喜んでくれるかなぁ……」

「うん」

「そっか。……それなら自分で連絡、してみようかなぁー」

「それが良いよ」


 これで少しは、亜寿華と陽菜乃の仲が進展するだろうか。2人で会話すれば、仲はすぐに良くなりそう。


 そんな会話を合間に挟みながら、俺たちの店内巡りデートは続いた。

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