第8話 あっという間に放課後

 真剣に学校の授業を受けていると、すぐに午前中は過ぎていった。


 中間試験が近づいているので、授業はちゃんと集中して聞いておく。今の時期は、授業を適当に受けると試験結果が悲惨なことになるのは明らか。聞き逃さないように集中して、授業の最中に内容を頭に叩き込んでおく。放課後は、やることがたくさんあるので、授業以外で勉強する時間はなるべく短縮したい。




 昼食は、家を出る時に陽菜乃から受け取っていた手作り弁当があったので、それを食べた。とても美味しかった。俺は彼女に、胃袋をしっかりと握られているようだ。


 昼休みが終わると、午後からもう少しだけ授業が続く。昼食後は特に眠くなるが、必死に眠気を我慢して授業に集中する。ここを頑張れば、後で面倒が少ない。家では勉強する時間を短く出来る。そう考えて、必死に頑張る。




「それじゃあ、今日の授業はここまで。次回は、このページの続きから始めるぞ」

「ふぅ。ようやく終わったか……」


 授業終了を知らせてくれるチャイムが鳴った。俺と同じように、クラスメートたちもようやく終わったかと、脱力している。


「お前たち、試験が近いからな。復習とテスト勉強はしっかりやっておくんだぞ!」

「「「はーい」」」


 先生から注意が飛ぶ。もちろん、試験では赤点を取らないように準備をしないと。それだけ言うと、先生は教室から出ていった。クラスメートが席から立ち上がった。約8割は部活へ向かい、残りは学校を出て家に帰る。


 俺も今日は、そのまま家に帰る。陽菜乃のクラスに迎えに行こう。机の横に吊っていたカバンを手に取って、席から立ち上がる。


「ハルト、もう帰るのか?」

「うん。そのまま家に帰るかな」


 信雄が声を掛けてきた。これは、遊びの誘いかな。


「暇なら、どっか遊びに行こうぜ」


 案の定、遊びに行こうという誘いだった。さて、どうしようかな。この後に急ぎの用事はないけれど、彼と一緒に遊びに行こうか悩む。ちょっと、乗り気じゃないからなぁ。


「どうしようかな」

「何か、用事があるのか?」

「いや。特にやることは無いが」

「なら、もう1人ぐらい誰か誘って、ゲーセンでも行こうぜ」

「うーん」


 ゲームセンターか。行こうかな。ちょっとだけ乗り気になったが、悩む。すると、ポケットの中のスマホが鳴った。誰から連絡が来たのか。


”ヤッホーー

きょう、ひま?

ひまなら遊びに行こうよ。

連絡今すぐちょうだい。まってるね。”


 南条亜寿華なんじょうあすかから、誘いの連絡。今日は、こちらを優先しようかな。


「あー、すまん。予約が入った」

「女か?」

「うん」

「おいぃぃぃ、俺のほうが約束するのは早かったんじゃないか?」


 連絡してきた相手が女性だと答えると、信雄は不満そうな表情。確かに、ちょっとだけ彼のほうが遊びに誘うのは早かった。ただ、亜寿華あすかを優先するべき理由もある。


「でもな。この子は、お前に紹介した女の子の友人だから」

「あぁ。あのギャルの子の」

「せっかく紹介してくれたのに、お前が”嫌だ”って断った子の友人だ」

「う。あれは嫌だからとかじゃなくて、なんというか……その……」

「詫びを入れるために、今日はこっちを優先するからな」

「ごめん、って」


 ということで、俺は亜寿華にチャットアプリで連絡する。すぐさま彼女から返事があった。待ち合わせの場所を取り決める。


 その間に、陽菜乃にもグループチャットで連絡しておく。これから亜寿華に会いに行くから、先に家へ帰っておいてくれと。今日はスーパーに寄る予定はなかったので良かった。


「じゃあ、また今度遊びに誘ってくれ」

「今度はちゃんと、誘ったら来いよな。じゃ、またな」


 納得してくれた信雄とは、あっさり別れる。そして俺は、亜寿華と約束した場所に1人で向かった。

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