第6話 突撃後輩
学校に到着した。校舎に来て、靴箱で上靴に履き替える。俺と彼女たちはクラスが違うので、ここでお別れだ。
「今日の放課後は、スーパーに買い物に行くのか?」
「まだ冷蔵庫の中に食材が余ってたから、大丈夫」
「そっか。なら夕方は、そのまま帰るか」
「うん」
晩御飯の食材は余っているようなので、帰りはスーパーに寄る必要はない。ということで、放課後はそのまま家に帰ることになりそうだ。
「千尋は、部活だよな」
「うん。夜は、ハルトの家に行くよ」
「了解」
部活動があるので、千尋だけ学校に残る。部活が終わって夜になったら、家に来るようだ。2人のスケジュールを確認してから、別れる。
「じゃあ、また後で」
「またねー」
「バイバイ」
階段を上がって、2人とは別の方向へ。1人になって、教室の扉に手をかけ開こうとした瞬間。ドンッと身体に衝撃が走る。
「センパイッ!」
「うおっ!?」
背中から腕をまわして、抱きつかれていた。柔らかな感触が背中に当たっている。幼い声で、俺を先輩と呼ぶ存在。
「千鶴ちゃん?」
「おはようございます。ハルト先輩」
首だけ後ろに向けて、肩越しに彼女を見下ろす。見上げてくる千鶴と目が合った。ニコニコと、楽しそうに笑っている。
「朝から元気だなぁ」
「今朝は、ハルト先輩に会えましたから」
「ほぼ毎日、会っていると思うが」
「それでも、嬉しいんですよ!」
本当に元気だった。そして、ぴったりと抱きついたままで離してくれそうにない。そのまま、俺たち2人は自然に会話を続けている。
「ハルト先輩、そろそろ運動部へ戻る気になりましたか?」
「いいや、全然」
千鶴から何度も運動部に戻るように懇願されてきたが、俺は何度も繰り返し断ってきた。
「そうですか。残念!」
「すまんな」
「いいですよ。先輩のやりたいと思った時に、私がまたサポートしますから」
彼女も、俺の返答を予想していたのだろう。あっさりと引き下がる。そして、俺が戻った時に活動のサポートをすると約束してくれた。
「そろそろ自分の教室に戻らないと、授業に遅れるぞ」
「そうですね。んー!」
一時限目の授業が始まる時間が迫ってきていた。自分のクラスに戻るよう言うと、彼女は俺の背中に顔を埋めて力強くギュッと抱きついてくる。頭だけじゃなく、胸も当たってるんだけど。小柄なのに豊満なボディの彼女。
「先輩、また家に遊びに行ってもいいですか?」
「ん? 好きな時に、遊びに来ていいぞ。楽しみに待ってる」
「はい! 絶対に、遊びに行きます」
名残惜しそうに俺の身体から離れると、家に遊びに来ていいか尋ねてくる。千鶴が家に来ても何も困ることはないので、歓迎する。さらに楽しそうな笑顔を浮かべて、彼女は片手を上げた。
「それじゃあ、また!」
「勉強と部活のマネージャー、頑張れよ」
「はーい」
別れを告げると、千鶴は一年生の教室に向かって早足で去っていった。それから、改めて俺は教室の扉に手をかけて開くと、中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます