第4話 食後のお皿洗い

 朝食を終えると、食べた後の皿を台所に持っていく。そして、汚れた食器を洗う。これぐらいしか出来ないけど、せめて食後の皿洗いだけでも任せてもらう。


 自分が食べた分の食器だったから、自分で片付けないと。あと、陽菜乃の食器も。彼女には色々と世話になりっぱなしで、頭が上がらない。これ以上は、彼女の世話にならないよう出来ることぐらいは自分でやろう。


 もう既に恩を返しきれないぐらい、どっぷりと世話になっているけど。


 俺と同じように千尋も、皿を運んできて一緒に洗い物をする。陽菜乃だけ、椅子に座ってゆっくりしている。暇していそうな彼女に、皿を洗いながら話しかけた。


「そういえば、紗紀子さきこさんは?」

「今日は大事な取引があるらしいから、早めに家を出て行ったわ」

「お仕事かぁ。大変だねぇ、水瀬みなせさんも」


 今朝から姿が見えなかった、水瀬紗紀子みなせさきこさん。半ば居候のような感じで、家に入り浸っている女性だった。俺が目覚める前に、家を出たらしい。


 あの人は仕事が大変で、毎日とても忙しそうだった。


 若いうちから起業して、色々な事業を立ち上げて稼いでいるらしい。そんな彼女と俺は、親の仕事関係で知り合って仲良くなった。一緒に、朝食をとったりしている。今日は顔を合わせる前に、家を出たようだけど。


「よし。洗い終わった」

「私も終わったよ」

「お疲れ様」


 ちゃんと洗ってから、食器ふきんでキレイに水を拭き取っていく。棚の元の位置に収納して片付けは終わり。千尋も一緒に洗い物をして、同時に終わらせた。




「じゃあ、そろそろ学校に行こうか」

「行きましょう」


 朝食を終えて、後片付けも済ませた。3人とも制服姿で、ちゃんとカバンも持っている。準備は万端。


「あー! ちょっと待って!」


 部屋の家の電気を消して、玄関に向かう。靴を履いて出発しようと扉に手をかけた瞬間、千尋が待ったをかける。


「なに? どうした?」

「化粧ポーチ、忘れてるかも」


 履いた靴をバタバタと脱いで、千尋は急いで家の中に戻っていく。さっき、彼女が髪を乾かしていた洗面所の方に向かったようだ。


「早く取ってこい」

「待っててー!」


 奥の方から声だけ返ってきた。かなり慌てた様子だったので、転んだりしなければいいのだが。運動神経は良いはずなのに、意外とおっちょこちょいな彼女。ちょっとだけ心配だった。


「慌ただしいなぁ」

「でも、カワイイでしょ?」

「うーん。まぁな」


 俺の呟く声に、陽菜乃がツッコむ。確かに、千尋の慌てた様子はカワイイと思う。すぐに千尋は戻ってきた。


「ごめん、ごめん! さぁ、行こう」

「忘れ物は、もう無いか?」

「えーっと……、うん。大丈夫」

「行きましょう」


 肩に掛けたカバンをゴソゴソと漁って、千尋は中身を確認する。色々と物が入って重そうなカバンだった。もうちょっとカバンの中身を整理すればいいのにな。千尋は確認し終えると、顔を上げてニコッと笑顔を浮かべた。


「じゃあ、出発」


 扉を開けて外に出た。俺の後ろから2人も出てきて、家を出る。学校までは歩いて15分ぐらいの距離。3人で並んで歩きながら、学校に向かった。

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