第3話 朝食

「おぉ! 今日も、美味そうだなぁ」


 リビングに来てみると、パンの焼けたいい匂いが漂ってくる。テーブルの上には、おしゃれに盛り付けられた料理が並んでいた。カリッと焼けたパンの上に、チーズと目玉焼きを乗せている。見ただけで分かる、間違いのない美味しさ。サラダも付いて健康的な朝ごはんだった。


「いつもありがとう、陽菜乃」

「美味しく食べてもらうのが、私の喜びだから。冷めないうちに召し上がれ 」


 自分の席に座って、俺は手を合わせて早速いただく。ボリュームたっぷりのパンを手に取り、齧り付く。うん! 美味い! 卵もチーズもパンも、全ての味が良い。


「わぁ! 美味しそう! 私の分もある?」

「もちろん。ちーちゃんの分は、こっち」

「ありがとう、ひなちゃん! あいしてるぅー!」

「はいはい。早く座って食べなさい」


 制服に着替えてリビングに入ってきた千尋。俺の食べている彼女の分も、ちゃんと用意されていた。俺の横の席に座って、彼女も一緒に並んでパンを食べる。彼女も、大きく口を開けて齧り付き、笑顔を浮かべて美味そうに食っていた。分かるよ、その気持ち。美味いもんなぁ。


 そして、俺の目の前には陽菜乃が座った。朝食の時間を彼女たちと一緒に過ごす。


 俺の両親は今、優雅に海外旅行中なので家には居ない。ラブラブな父親と母親は、俺を家に残して2人だけで旅行を楽しんでいた。旅行から帰ってきても、すぐにまた次の旅に出ていく。両親は、ほぼ家には居ない状態だった。


 株や不動産、他にも様々な不労所得で稼げているから働く必要ないらしい。貯金もたっぷりあるので、旅に行くのも自由だという。羨ましい限りだ。


 そんな両親の生活に憧れて、俺も楽して生きる方法を模索中だった。働かないで、好きなことだけして生きていきたい。


 両親が居ないから、代わりに隣に住んでいる幼馴染の陽菜乃が世話をしてくれる。ついでに千尋も家に来て、3人で仲良く朝の時間を過ごしていた。


 両親が家に居なくて、朝から幼馴染が家に来て朝食を作ってくれる。友人からは、まるでギャルゲーみたいな状況だなとツッコまれた。俺も、そう思う。ただゲームと違うのは、もうシナリオをクリアしてしまった後だということ。


 今の俺はエンディング後で、普通ゲームでは描かれないような状況なんだと思う。既に2人の美女たちからの好意を受け止めているから。彼女たちだけでなく、他にもたくさんの美女や美少女と親密な関係だった。そんな都合の良い設定のギャルゲーが存在するのだろうか? 俺は、聞いたことない。




「はい、どうぞ」

「お? ありがとう」


 パンを食べきり、ちょうど欲しいと思ったタイミングで陽菜乃がコップ一杯の牛乳を差し出してくれた。それを受け取り、ゴクゴクと飲む。うん、美味い。


 彼女は、俺の好みやタイミングなどをバッチリと把握しているようだった。今も、何も言っていないのに牛乳を用意してくれた。


 合間にサラダを食って、もう一つ目玉焼き乗せチーズパンを食べると、いい具合に腹が膨れた。合掌する。


「あぁ、美味かった。ごちそうさま」

「お粗末様でした」

「今朝も美味かったよ。特に、パンとチーズと卵が抜群だった! また食いたいな」

「ありがとう。とっても嬉しい」


 お礼を言うのは作ってもらった俺の方なのに、満足そうに陽菜乃は微笑を浮かべていた。

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