第4話 コタロウの武器

「あの…俺、声小さいので魔王様の手に乗せて頂いてもいいですか?」


 俺が喋れることに魔王は驚いた様子はない。


「…いいだろう、近くに寄れ」


 近くによると俺は手に乗せてもらえた。

 何でもお見通しって感じだ。


「…話せ、名前もだ」


 コンヤニの立場を考えると正直に話した方が良さそうだ。


「あ、はい。俺は異世界から来ました。コタロウといいます」

「そうか…?」

「ではありません、ですね」


 魔王の額の宝石が怪しく光り、こちらを見つめる。


「…嘘は言ってないようだな。しかし、いぬ?とは?」

「異世界のペットです」

「成程それでコンヤニのやつ…」


 魔王は納得しているようだ。


「ところで犬であるお前が何ができるか見せてもらえるか?」

「わかりました」


 俺はそう言うと、魔王の間入り口のドアの方向を向き、キャンキャンと吠えた。


「?」


 魔王はそれを見て不思議そうに首を捻る。


「俺は近くに誰かいた場合分かりますので、護衛ができます。門の外にコンヤニ様がいますよ?」

「ほう? コンヤニ…俺の言うことを聞けぬのか?」

「す、すいませんでしたー!」


 ドアの外でひっそりと待機していたコンヤニは、そう言うと驚いて去っていった。

 俺のこと心配して待機してくれていたんだろう。いい奴だなコンヤニ…許せ。


「成程…護衛としてコタロウは使えるな。他は?」

「…いやしです」

「? なんだそれは」

「言葉では説明できないものです…俺がこれからすることを許してくれますか?」


 魔王の額の宝石が怪しく光り、こちらを見つめる。


「…フムいいだろう」


 俺はおもむろに、魔王の手をペロペロと舐め始めた。

 魔王はこの時、黙っていたが…何故か体が小刻みに震えている?


 ! 俺はチラリと魔王の顔色を確認する。

 険しかった口元が緩んで、けんが取れている!


 ここだ!


ベチョ! 

 俺は次に魔王の顔をめ回した。


「こ、こらっくすぐったいやめっ…くっどわっはっはっー!」


 よし、魔王が押し殺していた自身の情を取り戻せた!

 と、何か揺れてるんだけど…? 


ゴゴゴッ…


 うわわっ! 結構激しい、震度三くらいあるんじゃないか?

 …よく見ると震源は魔王であった。


 よ、喜んでいいんだよね?


バタンッ!

 その時扉が開く音が聞こえた。


「ま、魔王様っ、無事ですカッ?」


バコオッ!

バタンッ!


…メキィ!


 心配して駆けつけたコンヤニに魔王の両手から放たれた衝撃破しょうげきは炸裂さくれつし、再び部屋から強制退場する。


「二度はないと言ったな? 俺は愚か者は嫌いなんだ」


 ま、魔王強い…。コンヤニが一撃だよ。


 それから数時間後。

 

「はっはっは、お前面白いな! 気に入った」


 すっかり上機嫌の魔王。良かった色々気に入ってもらえたようだ。


 俺はその成果が嬉しくて尻尾をぶんぶんと振りまくった。

 魔王は大きな手で俺を撫でまわす。


「それは兎も角、お前ここに何しにきたのだ言ってみろ?」

「実は…」


 俺は少し迷ったが全て正直に今まであったことを魔王に話した。


「そうか、お前の目的は異世界のヒロシの元に帰ることなのか」

「はい、正直魔王さん達とは分かり合えることが分かったし、もう争う気はないので…正直困っているんですよね」


 少し間を置いて魔王はこう返してきた。


「…ふむ、できるかもしれんぞ、実はな…」

「ええっ?」


 魔王の意外な回答に俺は驚いた。

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