第3話 無理ゲー

数時間後コンヤニの住処すみか


 俺達は様々な場所を通り、最終的に巨大な岩城にたどり着いた。


 夜になっているからか、周りが瘴気しょうきに囲まれているからか、薄暗く禍々まがまがしいイメージだ。


 あ、もしかしてここ、ラスボスの城? いやまさかね? 流石に女神様そんなスーパーハードモード用意してないよね? 俺犬ですよ?


 そんなことを考えていると、城の門前に門番達がずらりと並んでコンヤニ達をお出迎えをしていた。


 そんな中、真ん中に威圧感があるお偉いさんが立っていた。見た目人間ポイけど、口からは鋭い牙が見えるのと、目が真っ赤であるため残念だが違うだろう。


 長身で端正な顔立ち、スタイルがよく黒いローブに身を包んでいる。ってやつだろう。人の生き血を吸い、コウモリなどの変身能力がある不死身のモンスターだったな確か。この手のやつは魔王クラスに強い設定のはず。


「どうでした? コンヤニ」

「はっ…ヤコ草原は特に変化なしでした宰相さいしょうチルマ殿」


「そうですか…ご苦労様です。他の方面も異常なしとのことでした。にも報告しておくように」

「ははっ!」


 ええっ? ちょっとまってくれ。今魔王言ってたよ?


 …あれ? これゲームの基本から大きくはずれているんじゃね?


 普通、人が住んでる何処かの町とか村から始まって、スライムとかゴブリンとかザコモンスターを倒して、経験を積んでいって、色々苦労して中ボス倒していって、最強装備に最強の仲間達を揃えて最後に魔王って段取りがあるだろ? 


 うん、ヒロシはそうしてたな…。


 そんな俺の思惑とは裏腹に魔王の元にたどり着く。


   ♢


魔王の玉座


 魔王は玉座に肘をついて静かに座っていた。


 魔王の特徴としては頭に立派な三本角、額に黄色い大きな宝石トルマリン? 髪は金髪で、全身の服は派手で宝石が散りばめられた赤のフロックコートに黒のズボンを着ていた。見た目は中世ヨーロッパの王族って感じだな。


 王座は髑髏どくろを模した黒水晶で作られ、闇の王の禍々しさや威圧感を増幅させていた。


「魔王ルベード様っ、コンヤニ帰還しましたっ!」


 両手を組み膝を付き、力強い挨拶をするコンヤニ。魔王に委縮しているためか額に汗をかいている。俺にも物凄い緊張感が伝わってくる。


 …どうでもいいがコンヤニ…俺を肩に乗せているの忘れていないか? 俺ここに来たらイカンと思うのだがどうだろう? 実際コンヤニの周りの部下は誰もついて来ていないしな。


「…話せ…」


ビリビリッ…

 言葉を話すだけで、まるで雷が落ちたような振動が伝わってくる。


「…ヤコ草原は特に変化なしでしたっ」

「そうかご苦労…下がれ」


 その時、俺と魔王の目があった。


「…コンヤニ肩の物は何だ?」

「あっ!? 実はヤコ草原で拾った小動物でして…」


 やはり、コンヤニは俺を肩に乗せていたのを忘れていたようだ。


ピクッ…

 魔王の目が急に鋭くなる。


 えっ? 何? なんかで感づいちゃった?


「…コンヤニそいつを置いて下がれ」

「えっっ? あ、しかしっ…」


「…下がれ次はない」

「は、はっ!」


 コンヤニは一礼すると急いで魔王の間から出ていった。


 魔王と俺は二人きりになる。ま、まずいこれは無理ゲーだ。


 その時、魔王の額の宝石が怪しく光る。


 そして、驚いたことに徐々に目の形に変わっていき、となったそれは、ギョロッとした瞳でこちらを見つめている…。


 こ、こわっ…。

 俺は思わず身震いしてしまった。


「…お前、何処からきた? 話せ…」


 あ、これ魔王がなんかわかってて試される奴だ…。

 俺の第六感が危険信号を発している。


 ヒロシの元に帰らなきゃならないのに、どうする俺? コマンド?

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