第52話 ファイナル・ステージ(後編)

 ……えっと、この後は……


 俺はどう持っていけばいいのか、解らなかった。


 ……カレンの時はどうしてたっけ?確か酒飲んで、そのままキスして、その流れでホテルへ……


 イカン、イカン。

 この肝心要の場面で、元カノの事を参考にしてどうする!


 だが俺には、ここから『図書館の女神様』『影のミス城都大』そして『憧れの女性』である燈子先輩に、どうアプローチしていいのか、解らなかった。


 ……俺、臭くないかな?……


 何しろ燈子先輩との初Hだ。

 汗臭くないように、シャワーぐらい浴びた方がいいかもしれない。

 それで出来れば一緒に風呂に入れれば……


「あ、あの、俺、シャワー浴びたいんですけど」


 燈子先輩はスマホをいじりながら答えた。


「いいんじゃない。浴びて来れば」


 どうやら燈子先輩はシャワーを浴びるつもりは無いようだ。


「それじゃあ、俺は」


 そう言ってバスルーム入る。

 服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。

 これからの先の事を考えると、アソコが怒張してくるのがわかる。


 ……マズイな、これ。すぐ終わっちゃうんじゃないか?ここで一発抜いておいた方がいいかな……


 そんな考えが頭をよぎる。



 シャワーを出た。

 燈子先輩はテレビを見ながら、相変わらずスマホを弄っていた。


「ずいぶん長かったね」


 燈子先輩にそう言われても


「そうですか?」


 としか返せなかった。

 時計を見る。


 ……12時まで、あと三十分か……


 さっき燈子先輩は『12時までは、ココにこうしている』と言った。

 だから12時を回れば、彼女に迫ってもいいはずだが、そのキッカケがどうしたらいいのか解らない。


 ……だけどその時には、俺の我慢も限界だろうな……


 燈子先輩と反対のベッドに腰掛けて、とりあえずテレビを眺める。

 だがテレビの内容は全く頭に入ってこない。


 ……あと、5分……


 時計を見た俺はそう思った。

 このままだと、午前零時と同時に燈子先輩に襲い掛かってしまいそうだ。


 ……あと3分……


 そう思った時、燈子先輩が立ち上がった。


 ……もしや、彼女の方から誘ってくれる?……


「じゃあ、私はこれで帰るね」


 ……へっ?……


 俺は一瞬、頭が真白になった。

 どういうこと?


「一色君はここに泊まっていくといいわ。チェックアウトは朝の10時だから」


「燈子先輩、帰るって?」


「うん、お父さんが迎えに来てるから」


 ちょっと待ってくれ。

 これからが本番の時間じゃないのか?


「あ、あの、帰るって本当ですか?」


「本当だよ」


「だって『最後の時に一夜を過ごす』って」


 すると燈子先輩は困ったような笑顔を浮かべた。


「だから哲也には『そういう風に言う』って言ったでしょ。それで今日、クリスマス・イブの夜で日付が変わるまで一緒にいたんじゃない」


「えっ、一夜ってそういう意味?」


 すると燈子先輩は真面目な顔になった。


「君が何を期待しているか知らないけど、私は結婚するまで、そういう事をするつもりは無いから」


 俺は呆然として燈子先輩を見つめた。


「それに復讐は『哲也とカレンさんが、私たちが一夜を一緒に過ごした』と思えばいい訳じゃない。実際に何かをする必要は無いでしょ?」


「で、でも、燈子先輩は言ってましたよね?『鴨倉先輩が初めての人』って」


「それは『初めて付き合った人』って意味よ。誰も『初めて肉体関係を持った相手』なんて言ってないわ!私はこれまで、そんな事は一度もした事はありません!」


 ほぇ~。

 この時、俺は頭の中だけではなく、世界全部が真っ白になった気がした。


「まぁ哲也には『クリスマス・イブになったら、私の初めてをあげる』って言ってたんだけどね。それを条件に無理なお願いも聞いて貰っていたんだけど」


 俺は呆けた状態で、ただ燈子先輩の言葉を聞いていた。

 その間に、燈子先輩は自分の荷物を手にすると、部屋のドアに向かって行った。


「それじゃあ、また大学でね。ユ・ウ・く・ん!」


 燈子先輩は笑顔でそう言うと、ドアを開けて出て行った。



 ……つまり、こういう事だよな。燈子先輩はまだ処女バージンで、あの鴨倉も一度もHできてない、と……


 そして今までの事も全て合点がいった。


 なぜ鴨倉はあんなにアッサリと、カレンとの浮気旅行を取り止めたのか。

 燈子先輩はなぜ鴨倉を操ることが出来たのか。

 燈子先輩が言っていた『鴨倉に対する有効なカード』とは何か?

 全ては『燈子先輩との初H』を鴨倉が期待しての事だったのだ!


 そう思った瞬間、俺は爆笑した。

 部屋中に俺の笑い声が響き渡る。


 ……鴨倉は高校時代から燈子先輩を狙っていた。

 ……今年になってやっと彼女と付き合う事が出来た。

 ……だが彼女とは一度もH出来ていない。

 ……そして今夜、俺がその燈子先輩とHした事になっている。


 これってスッゲー『トンビに油揚げ』状態じゃね?

 カレンなんてビッチ女に引っかかったがため、鴨倉は極上の初物を、俺に奪われたって事か?


 これは男として最高に悔しいだろ。

 そして俺は倍返しどころじゃない、この上ないデッカイ仕返しが出来た事になる。


 ……最高だ、やっぱり最高だ、燈子先輩!こんな状況を作り上げるなんて……


 俺は笑い転げた。

 他人が見たら、気が触れたんじゃないかと思ってだろう。



 そこで俺は、ある事に気がついた。


 ……俺は燈子先輩と付き合う事になった……

 ……しかし燈子先輩は『結婚するまではHする気はない』と……

 ……そして当然、浮気はできない……


 今度は俺が鴨倉の立場になったと言う事か?

 俺は彼女と結婚するまで『セカンド童貞』を貫かねばならないと!


 だが俺は決意を新たにした。


 ……よし、やってやろうじゃないか。そして『桜島燈子の初めて』は、必ず俺が貰ってやる……


 そこまでやってこそ、『NTR返し計画』は完了なのだ。


 俺の、一色優の戦いは、いま始まったばかりだ!


<第一章 完>



>これで第一章は終りになります。

 最後までお読み頂き、本当にありがとうございます。


 ですが優と燈子の物語は始まったばかりかと思います。

 現在、第二章としてのプロットを検討中です。

  『浮気者達の逆襲(Return of Cheaters)』

  『シスターズ・アタック』

 のどちらで行こうか思案している所です。


 もし良かったら『★の応援』やコメントを頂けると、とっても嬉しいです。

 意欲が倍増します!

 面白かったと思われたら、よろしくお願い致します。

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