第27話 燈子先輩「可愛い子化計画」
俺はその週末の土日とかけて、燈子先輩に頼まれた『可愛い女の子』について考えていた。
今もベッドに横になりながら、その事を考えている。
……『可愛い女の子』か。やっぱり美少女で、優しくて、普段はシッカリしてるんだけどたまにダメな所があって……
そんな風に考えている内に、なぜか自然と燈子先輩の事が頭に浮かんできていた。
美人で、清楚で、お淑やかで、でも俺が辛い時には慰めてくれる優しさもあって、そして先週は彼氏の浮気を見て泣いていた女の子で……
いやいや、違う。
その燈子先輩から『可愛い女の子とはどういうものか?』を聞かれているんだろ?
それに『アナタです』って答えてどうするんだ?
……え~と他には……料理が上手で家庭的で、俺にたまに甘えてくれて、でも甘えさせてくれて。他の男には冷たいんだけど、俺にだけちょっとHな女の子……
また無意識に燈子先輩を想像してしまう。
燈子先輩がエプロン姿で俺に料理を作ってくれる。
笑顔で俺に「今日のビーフシチュー、会心の出来よ」とか言ってくれちゃったりして……
食事の後は、俺は燈子先輩の膝枕で、一緒にテレビを見たりして。
そして寝る時は、燈子先輩が俺の胸に猫みたいに丸まってくっついて来たり……
暗闇の中で、そっと服を脱ぎ、ブラジャーを外す燈子先輩。
「君だけだよ、私のこんな姿を見せるのは……」
なんて言ってくれたりとか……
って何を考えてんだ、俺!
こんな事、燈子先輩に言える訳ないだろ!
そもそもコレって全部、俺の願望じゃないか!
……ベッドの上で考えているから悪いのかも……
そう思った俺は起き上がると、机の上のノートPCの電源を入れた。
……一色優、『可愛い女の子』の定義について、50文字以内でまとめよ……
そう頭の中で自分に命令する。
エディタを立ち上げて、その条件を列記した。
『可愛い子・やっぱり美少女で優しい。普段はクールだけど実は弱い面もある。そんな弱い面を俺にだけ見せてくれて……』
ってやっぱりコレ、燈子先輩に結びついちゃうじゃんかよぉ~!
ダメだ、今の俺の頭の中って、女に関しては燈子先輩で占められているんじゃないか?
そんな時だ。スマホのバイブが振動した。
見ると石田からSNSメッセージだ。
>(石田)優、いまヒマ?
>(優)ちょっと考える事があったけど、別に大丈夫。
>(石田)じゃあ今から出て来いよ、俺もヒマでさ
>(優)わかった。どこに居る?
>(石田)いつもの国道14号沿いのファミレス。すぐ来るだろ?
>(優)オッケー。今から家出るから。
俺はスマホを閉じると、さっそくチャリンコに乗って、石田が待つ国道沿いのファミリーレストランに向かった。
俺の家は国道から海側に入った一軒家。
石田の家は国道により近いマンションだ。
待ち合わせのファミレスは、どちらの家からも自転車で十分ほどだ。
店内に入ってグルリと見渡す。
すると既に俺に気付いていた石田が、右手を上げて俺に合図する。
窓際のテーブル席だ。
俺がシートに座ると、石田が訝しげな顔をする。
「どうした、優?なんか難しい顔して。何かあったのか?」
「ん?いや、ちょっとな」
「何だよ、気になるな。話せよ。もしかしてカレンちゃんの事か?」
「いや、そんな事じゃないよ。そもそもそんなに深刻な話じゃないし」
「じゃあ言えよ。深刻な話じゃないんだろ?俺も一緒に考えてやるよ」
そうだな、俺一人じゃ考えがまとまらないもんな。
石田の意見も聞いてみた方がいいかもしれない。
「石田は『可愛い女の子』の条件って、何だと思う?」
「可愛い女の子の条件?」
石田は不思議そうな顔をして、聞き返した。
「そう、それを昨日から考えていてさ」
「う~ん」
石田は腕組みをして考え始めた。
「まぁやっぱり美少女だろうな。それに『学校一』とか『憧れの』って形容詞が着くとベストかな」
……憧れの美少女、燈子先輩じゃん……
「あとやっぱ巨乳がイイよな。細身で巨乳だと、それだけでそそるじゃん」
……細身で巨乳。燈子先輩だよな……
「あとツンデレ・クーデレって言うのもソソルだろ。
……燈子先輩ってツンデレ・クーデレ系に入るよな。デレ要素が少ないけど……
「金髪、ツインテールって萌えるよな」
……燈子先輩は黒髪ロングだけど、金髪にしても似合いそうだな。ツインテールもいいかも……
「バンドやっている女の子ってのもいいよなぁ」
……燈子先輩ならイメージ的にバイオリンとかサックスって感じだけど。あ、バンドにサックスも有りか……
「幼なじみとか、血の繋がらない姉妹って、シチュエーション的に盛り上がるっていうか」
……?確かにそれがいいかもしれないけど……でも燈子先輩がいきなり『義理のお姉さんになりました』って嬉しいかも!……
「獣耳いいよなぁ。特にネコ耳とキツネ耳」
……??獣耳がいい?あ、でも確かに燈子先輩のネコ耳とか可愛いだろうな……
「魔法少女も捨てがたいだろ。露出の高い衣装でさ」
……???魔法少女だ?それって最早コスプレの世界じゃ……
「おい、石田。おまえ、何の話をしている?」
石田は夢から現実に引き戻されたような顔をした。
「え?『可愛い女の子の条件』についてだろ?アニメかマンガの」
……オマエに聞いた俺がバカだった……
俺は軽く額を押えた。
もっとも石田の妄想に、俺も燈子先輩を登場させるというバカ想像の上乗りをしていたが。
「おまえさ、現実に魔法少女だの獣耳の女がいたら、ソイツと付き合えるのか?」
「俺は付き合えるぜ。俺の愛に差別はない!魔法少女だろうが、獣人娘だろうが、オールオッケーだ!」
石田は自信を持って言い切った。
もういいや。
他人に頼らず、自分の力だけでこの問題は乗り切ろう。
最後に俺は言った。
「別にオマエの好みにケチつける気はないけどさ、『妹属性』は止めた方がいいぞ。リアル妹の明華ちゃんに知られたら、気持ち悪がられるぞ」
そういう妄想は、一人っ子の俺か、男兄弟のヤツだけに許されるのだ。
「お~、そう言えば明華がな、優の事を心配していたぞ」
急に話題が変わった。
そう言えばコイツ、明華ちゃんに『カレンと鴨倉の浮気』の事を知られたんだよな。
「そうか。明華ちゃんには『俺は大丈夫。ありがとう』って伝えておいてくれ」
「解った。でも明華はオマエの事を色々と知りたがってな。ウルサイんだよ」
「そういう話に興味を持つ年頃なんだろ」
だが石田は首を左右に振った。
「いや、多分違うな。明華は優に気があるんだよ。話の感じから解る」
俺はその言葉に驚いて顔をあげた。
また石田が冗談を言っているのかと思ったが、真面目な顔だ。
石田が言葉を続けた。
「前からそんな雰囲気はあったんだ。アイツはけっこう優が来る時は、身なりとかに気を使っていたしな。普段はやらない部屋の掃除とかもしていた。だけど今回の事でハッキリしたよ。アイツはオマエが好きなんだ」
突然、親友からそんな話を聞かされても、どう反応したらいいか解らない。
俺が戸惑っていると石田の方が先に答えを出した。
「もっとも今の優は、明華に構っている所じゃないよな。まずは鴨倉とカレンちゃんに報復しなきゃ。そして『最後の時』には燈子先輩と一夜を共にするんだろ?それが全てだよな」
俺は黙って頷いた。
でも俺は、その計画の何パーセントまで進んでいるんだろう?
自分では全く進んでいる自信が無いのだが。
>この続きは明日(1/2)正午過ぎに投稿予定です。
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