第10話 浮気現場パパラッチ作戦(後編1)

《前回のお話》

 鴨倉哲也と蜜本カレンが浮気のために密会すると予想した日。

 優は学校から帰る鴨倉を尾行した。

 だが秋葉原で鴨倉を見失ってしまう。

 鴨倉が上野方面の山手線に乗った事まで確認した優は、それを燈子に連絡した所、

 「話がある」と言われて秋葉原で落ち合うことになった。



「ところで、話と言うのは?」


 俺からそう切り出した。


「うん、君の連絡のお陰で、二人が会いそうな行きそうな場所の目途が着くと思うの。それを一緒に確認しておきたくて」


 燈子先輩はバッグの中からタブレットPCを取り出した。

 そこに首都圏の路線図を表示させ、テーブルの上に置く。


「私たちの大学があるのは中野と高円寺の間、哲也とカレンさん、それに私たちもだけど、利用している駅は中野駅」


 俺も黙ってテーブルの上に広げられた路線図を見る。


「哲也のアパートは錦糸町。だから総武線で一本よね。カレンさんが住んでいるのは実家で越谷だったかしら?」


「そうです。普段は越谷から北千住、秋葉原で乗り換えて学校に来るそうです」


 それを聞いて燈子先輩は頷いた。


「カレンさんの『学校から家までの移動経路』は三つあると思うの。一つはいま君が言った経路。二つ目が池袋から新宿経由の経路。三つ目が『錦糸町から半蔵門線を使って越谷に行く』経路」


「錦糸町乗換えは楽だけど少し時間が掛かるから、今の通学経路にしたって言ってました」


「そうね。だけど哲也のアパートが錦糸町にあるから、『もしかしたら』って思っていたの。でも今日の一色君の話を聞いて、その線は薄そうだと思ったわ」


「燈子先輩は、二人はどこで落ち合うと思っているんですか?」


「私の予想では日暮里あたりかしら?」


 燈子先輩は路線図を指さした。


「私が調べた所、二人が行きそうな範囲、この場合は山手線沿線ね、で、ラブホテルが多いのは、新大久保、新宿・池袋、日暮里、渋谷・鶯谷の順なのよ」


 さすがは燈子先輩だ。

 既に色んな情報をインプットしている。

 『情報工学科二年でトップの成績』と言われているだけの事はある。


「この内、渋谷は除外するわ。二人の通学経路上には無いから。それと新宿・渋谷・池袋の三つは、ウチの学校の生徒と会う可能性も高いでしょうしね。二人でラブホテル街なんて歩いていたら、それこそ噂になるわ」


「なるほど、すると鴨倉先輩が秋葉原で乗り変えた点からも、日暮里か鶯谷の可能性が高いと言う事ですね」


「そういうこと。二人とも学生であまりお金に余裕は無い以上、ムダに交通費がかかる場所に行くとは思えないからね」


「日暮里と鶯谷、行くとしたらドッチでしょうか?」


「それは解らないけど……ただ私ならまだ日暮里かな。何となく日暮里の方が『ラブホ目的』って感じがしないかも。グルメスポットでも日暮里は紹介される事があるしね」


「それじゃあまずは日暮里にマトを絞るとして、その後はどうしますか?次に二人が会いそうな月曜日に、予め日暮里駅で見張っているとか?」


「でも日暮里駅は北改札口と南改札口があるのよね。南改札口は西側の出口しかないみたいだけど、北改札口は西口と東口の両方に出られるみたいなの。二人で見張っても一箇所は手空きになるわね」


 燈子先輩は再びタブレットPCを操作し、日暮里駅の構内図を表示した。

 確かに駅には三つの出入り口がある。


「改札で見張る、って言うのはどうですか?」


 だが燈子先輩は首を左右に振った。


「それはダメよ。改札で出てくる人を見張るなんて、目立ちすぎるわ。そもそも改札の真正面に立っている人がいたら、無意識にその人に目をやるでしょ。それが見知った人間なら確実にバレるわよ」


 そういうもんなのか?俺はあまり意識した事がないが。

 その時、俺は石田の顔を思い出した。


「燈子先輩。前に俺は『石田にはこの件を話した』って言いましたよね?アイツに見張りを手伝ってもらう、と言うのはどうでしょうか?アイツなら信用できるし、力になってくれると思います」


 燈子先輩はしばらく思案していたが


「それしか方法がないかもね。いいわ。私も一美に話してみる。場合によっては二人に協力をお願いしてみましょう」


 と同意してくれた。




>この続きは今日の夕方5過ぎに投稿予定です。

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